米国議会、米豪FTAを圧倒的多数で承認


上院下院ともに圧倒的多数で承認

 米国上院は7月15日に行われた本会議で、米国と豪州の間での自由貿易協定(FTA)を賛成80票、反対16票の圧倒的多数の賛成を得て承認した。同協定は既に14日に行われた下院でも賛成314票、反対109票で承認されており、今後、米国内ではブッシュ大統領による署名手続きを残すのみとなった。

 ゼーリック米国通商代表は同日、両院による速やかな承認を歓迎する旨のコメントを公表した。また、同代表は「この合意は実質的には鉱工業品のFTAであり、両国間での99%の鉱工業品が発効の暁には無税となる」としたが、畜産分野では米国への牛肉や乳製品の輸入については、特別な関税割当(TRQ)が設定され、18年間の移行期間を設けて市場アクセスの改善を図るなど、国内関係者の理解を得るために保護措置が講じられる。

セーフガードに守られる牛肉

 加工原料用牛肉についてはFTAに基づく15,000トンの特別なTRQを設定し、これを18年間で70,000トンまで拡大する。ただし、米国におけるBSEの発生に伴う影響を勘案し、米国の牛肉の輸出量が2003年の水準まで回復するか協定の発効から3年のいずれか早い時期まで、TRQの割り当ては行わない。また、枠外税率については9年後から漸減し、18年後には廃止する。9年目から18年目までは、加工原料牛肉の輸入数量が当該年のTRQの数量の110%を上回った場合、最恵国待遇で適用される関税とTRQの枠外税率の差の75%に相当する関税を追加的に賦課する数量ベースのセーフガードが発動される。

 また、18年間の移行期間の終了後には、四半期における任意の2カ月間(第4四半期においては単月のみ)の指標価格(セレクト級部分肉の卸売価格)が過去24カ月の指標価格の移動平均を6.5%以上下回った場合に関税を最恵国待遇の関税の65%の水準まで引き上げる価格ベースのセーフガードが牛肉・牛肉製品に発動される。このセーフガードは第1四半期(1〜3月)から第3四半期(7〜9月)は、発動要件を満たした四半期の次の四半期にのみ適用されるが、9〜11月に発動要件を満たした場合には、年の残りの期間について発動される。

乳製品TRQは毎年漸減

 乳製品については、世界貿易機関(WTO)の農業交渉結果に基づきTRQが設定されている品目を除き、FTAに基づく特別なTRQを設定し18年間で関税を撤廃する。関税の漸減は基本的には18年間で均等に行われる。毎年度のTRQ枠の拡大は、山羊のチーズ(TRQ枠の拡大率5%)、クリーム、アイスクリームなど(同6%)、スイスチーズ、ヨーロッパータイプのチーズなど(同5%)、脱脂粉乳を除く粉乳(同4%)、チェダーチーズ、アメリカンタイプチーズ、脱脂粉乳、バター(同3%)とされている。

 ただし、詳細な品目のTRQの設定に際しては商品金融公社(CCC)の酪農支持対策の対象となる品目は除外される。

 また、協定の発効から20年後に豪州は米国に対してFTAに基づく特別なTRQの対象品目の市場アクセスについて協議を求めることが出来るが、米側が合意しない限り、市場アクセスの改善は行われないとされている。

早期解決が望まれる動物検疫問題

 米側はこれまで一貫して豪州側の検疫措置が過度に厳しく、検疫当局による作業の進捗が遅いことに懸念を抱いてきた。動物検疫問題については、同協定の下で米国農務省動植物検疫局と豪州の検疫当局(バイオセキュリティーオーストラリア)との間で技術作業部会を立ち上げることとしており、今後、米国産牛肉のBSE発生に伴う輸入禁止などの問題について議論が行われる予定である。


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