世界貿易機関(WTO)の紛争解決機関(DSB)のパネル(紛争処理小委員会)は3月15日、EUの農産物や食料での商標と地理的表示(GI)保護制度に関する調査報告書を公表した。 EUでは、GI保護規則が機能 EUでは、地理的に区別された地域における確かな特徴を持つ高品質の農産物についての価値を高め、また農村地域での農業生産の多様性を促進するための規則として、「農産物および食品のための原産地呼称および地理的表示の保護に関する理事会規則(EEC/2081/92)」を規定している。これまでにEUは、フランスのチーズ「ロックフォール」やイタリアの生ハム「プロシュット・ディ・パルマ」などEU域内の約700品目の農産物や食料について登録を行ってきた。
米国および豪州は2003年8月13日、この「農産物および食品のための原産地呼称および地理的表示の保護に関する理事会規則(EEC/2081/92)」が、(1)EU加盟国の製品とEU域外で生産された製品に同等の扱いを与えていない、(2)EU以外のWTO加盟国の製品に対してEU加盟国で認められている恩恵、特権、免除を直接および無条件に認めていない、(3)商標(trademark)を法的に保護する重要性を減らしている、(4)GIの誤った利用を防ぐための関係者に、法的権限を与えていないなどが見られることから、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)などのWTO協定に合致していないとして、パネルの設置を要請した。
欧州委員会は3月15日、WTOが公表した報告書に対するプレスリリースを発表した。これによると、WTOのパネルは、EUのGIにより名称を保護するシステムは、基本的にTRIPS協定の要求を含むWTOのルールに矛盾していない。また特に登録商標とも共存できることを認めているとした。
しかしながら、パネルの報告書では、EUの規則を全面的に支持しているのではなく、EUの規則にはEU加盟国以外の産品への適用やその手続きにおいて、WTO協定などと矛盾した部分があるので、それぞれの協定に沿った内容に修正することを勧告している。 |
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