牛肉・鶏肉小売価格の値下げに合意 ● アルゼンチン


主要5カットの小売価格を10%値下げ

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は3月15日、必需食料品の一つである牛肉小売価格の最近の上昇傾向に対し、国民の購買力を保護するため、アルゼンチン食肉商工会議所(CICCRA)など食肉関係の5団体と、小売価格を最低10%値下げすることについて合意した。対象となるのは骨付きバラ、リブロース、ひき肉、カタ、すねの5部位で、現時点より約10%安であった1月最終週から2月第1週の価格水準まで戻し、その価格を合意書署名の日から90日間維持するか、またはさらに水準以下まで値下げするとしている。食肉団体によると国内で生産される牛肉の85%が国内で販売され、国内消費分の35%がこれらの部位に当たるとされる。さらに政府および民間それぞれの部門の代表で構成する委員会が上記5部位の価格の推移について定期的な報告を行うことも合意内容に含まれている。

 国家統計局(INDEC)によると、2005年2月の骨付きバラの1キログラム当たり小売価格は前年同月比14.3%高、また前月比3.5%高となり、ひき肉はそれぞれ同15.2%高、同3.6%高となった。

牛肉小売価格の推移
(単位:ペソ/kg)
資料:INDEC


生体価格の上昇などが要因

 牛肉小売価格の上昇の背景には、好調な輸出や生体価格の上昇が挙げられている。

 輸出量については衛生状況の好転により市場が拡大したことで2004年は史上最高を記録、2005年1月は前年同月比50%増となっており、今年も記録更新が見込まれるなど、好調な輸出が続いている。

 また、リニエルス市場の2月の去勢牛価格は天候不順による出荷頭数の減少から1キログラム当たり2.12ペソ(76円、1ペソ=36円)と前年同月に比べ7.0%高となった。



鶏肉は約8%の値下げ

 さらに3月17日には、牛肉と同様に価格の上昇がみられる鶏肉についてもSAGPyAとアルゼンチン養鶏加工協会(CEPA)の間で合意がなされ、合意書署名の日から90日間、丸鶏の卸売価格は2.70ペソ(97円)に付加価値税をプラスした価格に値下げをするとしている。CEPAによると、この結果小売価格は現在1キログラム当たり4.10ペソ前後から3.80ペソ程度へ値下げをする見込みとなる。

 政府は必需食料品の価格上昇を防ぐため、大手生産企業、流通企業との合意により、インフレを抑制する方針を明らかにしており、牛肉、鶏肉に続き、乳製品、油脂などの必需食料を構成する製品についても同様の合意を取り交わしたい意向を示している。

 なお、牛肉と鶏肉については3月17日、SAGPyAと大手スーパーマーケット6社とスーパーマーケット協会(ASU)の間で食肉関係団体およびCEPAとSAGPyAが合意した値下げを小売価格に反映させることが確認された。

 また、乳製品については3月22日、乳製品輸出会社で組織する団体(CIL)とSAGPyAが国内向け乳製品の小売価格を値下げすることに合意した。具体的には乳業メーカー8社が(1)ビニールパック入り牛乳を1.5%、(2)2種類の軟質チーズを5%、(3)1リットルサイズのビニールパック入り飲むヨーグルトを8%、それぞれ値下げすることになっている。この合意は150日間継続されるとされ、またCILとSAGPyAは本合意に参加していない乳業メーカーに対して共同で参加するように呼びかけるとしている。



価格引下げを合意した対象品の価格上昇が顕著

 必需食料品の値上がりを抑制するため政府が努力する中、4月5日にINDECが公表した消費者価格のデータによると、3月の消費者物価の上昇率が高いのは、政府の意に反して、政府と企業の協定が成立した製品となっている。10%の値下げが合意された牛肉5品目については前月比でそれぞれ、リブロース、ひき肉が8.8%、骨付きバラが7.4%、すねが10.2%、カタが8.3%と、2月の消費者物価の上昇率をそれぞれ1.5〜2倍の範囲で上回った。また、鶏肉については、小売価格が1キログラム当たり3.80ペソとなるように卸売価格を調整するという合意が成立していたが、3月の鶏肉平均価格は3.95ペソと2月に比べ9.7%高となっている。政府は牛肉の値下げが実施されなければ、輸出税の引き上げも視野に入れるとしている。


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