4月に正式締結の見込み
タイとニュージーランド(NZ)との経済連携協定(EPA)に関しては、昨年6月から交渉が開始され、12月に政府レベルでの合意に達し、今年の7月から発効の予定となっている。しかし、EPA締結に伴う合意文書への署名手続きに関して、今年の第2四半期の早い時期との約束がされているものの、具体的な日程が公表されないままでいる。
この日程に関して、NZ首相が4月18日から20日にかけてタイを訪問する予定とされており、その間に実施されるとの観測がながれており、締結が行われれば、タイにとって対先進国としては豪州に次ぐ2件目のEPAとなる。
競争への不安
今回のEPAにおけるタイのセンシティブ品目を、関税計画(Tariff Schedule)上の関税撤廃年をみると、脱脂粉乳などの乳製品が2025年と最長になっており、次に牛肉や豚肉などが2020年となっている。
乳製品に関して最長の期間が設定してあるのは、今後も酪農が農家所得の向上など、農業の中でも保護振興すべき分野と位置付けているためであり、政策上も、生産振興を図ることとして、生産者の技術レベルの改善などの計画が進められている。
タイ政府は、UR合意に基づいて、1995年に乳製品の関税割当枠(TRQ)を設定し、その後割当数量を増加させて来たが、消費の拡大により合意水準以上の関税割当を行ったときもあった。また、余乳が発生する場合もあり、需給調整には困難が付きまとっている。
このような中、たとえ保護される期間が長期にわたっても、最終的にはNZや豪州産の乳製品と競争を強いられることに対し、生産コストの面で太刀打ちできないと不安を訴える酪農関係者もいる。
NZの脱脂粉乳TRQは無し
タイと豪州とのEPAは既に今年の1月から発効しており、これに伴い、タイは豪州に対して脱脂粉乳2,200トンのTRQを設定した。このことは、昨年7月の豪州とのEPA締結時点で判明しており、交渉中のNZは、2003年におけるタイ市場でのNZの脱脂粉乳の輸入シェアを根拠に、豪州以上のTRQを要求していた。しかしながら、NZへの脱脂粉乳のTRQは設定されなかった。
特に脱脂粉乳は、輸入乳製品の中でも重要な地位を占めており、NZに対しても脱脂粉乳のTRQが設定されれば、数量はともかく、豪州とのEPA締結以前から高まっている生産者側の不安が増す可能性があったものと見られる。
また、輸出品目が共通するNZ、豪州両国のタイに対する主要畜産物の特別セーフガード(SSG)のトリガー水準の設定などを整理すると下表のとおりである。
いずれにせよ、タイ政府にとっては、主要乳製品輸出国2カ国とEPAを締結することにより、酪農関係者の不安解消への取組みの必要性が一層増している。
タイのSSGとTQの設定 |
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資料:タイ商務省のホームページから作成。 |
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