イギリス、30カ月齢超の牛の食肉がフードチェーンへ


FSAの勧告をイギリス政府が承認、11月7日から実施へ

 イギリス環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は9月15日、30カ月齢を超える(OTM)牛の処分対策に代わり、BSE検査に切り替えるイギリス食品基準庁(FSA)からの勧告を政府が承認したことを発表した。この変更は、11月7日から実施され、これにより、同国では30カ月齢を超えるBSE検査で陰性であった牛の肉が食肉として流通することとなる。その際、96年8月1日(肉骨粉の給与禁止措置開始日)より前に生まれた牛は除外される。

 DEFRAは2004年12月、FSAがBSE検査の体制が信頼できるものである勧告を行うまでは本件の最終変更を実施しないとしていた。これに関し、FSAの理事会(Board)が本年8月15日、OTM牛の肉を食用に流通させる前に実施する、BSE検査の体制が信頼できるものであるという旨の勧告を保健大臣など関係する大臣に行っていた(海外駐在員情報第686号参照)。


公衆衛生の保護は、最重要事項

 DEFRAのベケット大臣は、「公衆衛生の保護は、政府の最重要事項であることに変わりはない。DEFRAは、厳格なBSE検査が適用されることが確実となるよう務める。今回の決定は、イギリス産牛肉の供給を増加させるとても素晴らしいニュースである。また、96年8月1日以降に生まれた牛を可能な限り早期に輸出できるようにするためブリュッセル(欧州委員会)に働きかけていく」とコメントしている。なお、DEFRAは、現在イギリス産牛肉に課せられている輸出の規制については、欧州委員会が11月前までには本件に関する提案がありそうにないと見ており、2006年の初めの適用は期待できないとしている。

 また、96年8月1日より前に生まれた牛については、恒久的にフードチェーンから除外されることになるが、DEFRAは、現在のOTM牛処分対策に代わる、老齢牛処分対策(Older Cattle Disposal Scheme:OCDS)として、これらの牛の処分に対する補償対策を欧州委員会と検討している。


MLCがOTM処分対策変更による影響を発表

 これに関連して、イギリス食肉家畜委員会(MLC)は9月14日、OTM処分対策変更の影響に関する報告書を発表した。この中でMLCは、今回の分析の前提条件として、11月1日から変更が適用されるとして分析を行っている。

 イギリスの現在の牛肉・牛肉製品の自給率は約60%である。今回の変更により、30カ月齢を超える牛の食肉がフードチェーンに流通すると、2005年には、2万3千トン(8万頭)、2006年に18万5千トン(63万5千頭)の牛肉がこれらの牛から生産されると見込んでいる。これらの増加分はすべて、乳用牛からのものとしている。

 また、MLCは、国内の牛肉生産量の増加により、輸入量は、2004年の52万トンから2006年には38万トンに減少すると見込んでいる。イギリスでは伝統的に、乳用牛の肉は小売りやフードサービス部門で、生鮮ひき肉などとして販売されている。輸入についてもこれらの部門での減少が見込まれる。また、輸入相手先はアイルランドが最も多く、同国は大きな影響があるとして、すでに代替市場を探している。

イギリスの牛肉需給予測(単位:千トン)


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