牛のと畜重量の下限を決定 ● アルゼンチン


300キログラム以下の家畜のと畜を停止

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は8月24日、輸出需要と国内消費の増加に対応するため、これまで設定されていなかった若齢去勢牛および未経産牛のと畜重量の下限などを定めた決議第645/2005号を制定し、翌25日に公布した。主な改正事項は以下のとおり。

  • 農畜産品衛生事業団(SENASA)は、ほ乳子牛、子牛、生体重量が300キログラム以下の若齢去勢牛・未経産牛のと畜を目的とする家畜移動証明書(DTA)の発行を中止する。
  • 若齢去勢牛と未経産牛の半丸枝肉の最低重量を85キログラムとする。
  • 1973年3月28日付け旧食肉審議会決議第J-379/1973号に規定されている若齢去勢牛と未経産牛の各格付け別重量基準を半丸枝肉当たり7キログラム増加し、それぞれの最大重量クラスの上限を125キログラム、120キログラムとする。
  • ほ乳子牛および子牛のと畜を一時的に停止する。
  • この措置は11月1日から実施され、180日間継続し、必要に応じて期間を延長することができるものとする。

 なおこれにより、と畜重量に関する決議の改正は1973年以来32年ぶりとなるが、下記に決議J-379/1973号などで示されている格付けを参考に紹介しておく。なお詳細は「畜産の情報 海外編」2000年2月号p60〜61を参照のこと。


SAGPyAは中期的な供給増を期待

 SAGPyAでは、今回の改正に至った経緯について、

  • 子牛のと畜頭数は総と畜頭数の16%を占めているにもかかわらず、牛肉総生産量の9%を占めるに過ぎないこと
  • これに半丸枝肉重量85キログラム以下の若齢去勢牛および未経産牛を加えると、総と畜頭数の26%、牛肉総生産量の17%になること
  • 子牛のと畜一時停止は、重量の増加および歩留まりの向上により、中期的には市場における牛肉供給量の増大をもたらすと予想されること
  • この措置は輸出需要の増大と国内消費の成長に対応するため、妥当と考えられること

−などを挙げている。

 SAGPyAの説明によると、アルゼンチンの平均枝肉重量は217キログラム(2005年1〜6月平均)で、競合国であるウルグアイ、米国、オーストラリア、ニュージーランドのそれを下回り、また、子牛の年間平均と畜頭数は約180万頭で、このうち7%が半丸枝肉重量50キログラムで、そして30%が55キログラムに到達していないとされる。
なお、と畜施設および生産者がこの決定を順守しているかについては、国立農牧取引管理事業団(ONCCA)が監視することになっている。


農業関係団体は反対声明を発表

 一方、農業団体は今回の決定に対し、一斉に反対の声明を発表している。

 アルゼンチン家畜会議所は「この措置が施行されるまでに、肥育仕上げ前の段階にある家畜が早期販売されることで供給過剰となり、その後、供給不足による価格の上昇を引き起こし、政府の目指す方向とは逆になる」と懸念を示し、ブエノスアイレス州およびラパンパ州農牧連合会(CARBAP)は「今回の誤った措置は以前より畜産業界が要求してきた国家畜産計画の不在が要因である」と強く非難した。

 また、アルゼンチン農牧連盟(CRA)も、アルゼンチン家畜市場への政府の介入姿勢に懸念を示し「問題解決につながらない統制の復帰を意味するもので、企業の自由を侵害することとなる」とし、さらにアルゼンチン農牧協会(SRA)、CRA、農協連盟(CONINAGRO)および3つの家畜委託販売業会議所は「この措置は生産性に負の影響を与え畜産の収益を低下させるだけでなく、子牛生産システムを崩壊し、さらには家畜のやみ取引を増長させる恐れもある」との共同声明を発表した。 

 なお生産者はコンセプトとして、と畜重量の増加に賛成するものの、制限措置には反対するという点で一致していた。


ソフトランディングを決定

 SAGPyAは、決議第645/2005号の実施まで1カ月を切った10月4日、11月1日からのと畜を制限する生体重量300キログラム以下を260キログラム以下に修正した。

 具体的には、決議第729/2005号(2005年10月4日付け)を同月5日に公布し、ほ乳子牛および子牛のと畜停止は変更せず、生体重量制限について以下のように変更し、非難の声が強かった当制度のソフトランディングを図った格好となった。

 11月1日〜300キログラム以下のもの
    →11月1日〜260キログラム以下のもの
     12月15日〜280キログラム以下のもの
      1月31日〜300キログラム以下のもの

 しかしアルゼンチン農牧協会(SRA)などはプレスリリースにおいて、9月27日に会合を持ってから10日もしないうちに決議が公布されたことを批判しつつ、「消費と輸出の増加に対する唯一の方法は生産の増加である。そしてその目的の達成は、国家畜産計画の枠組みの中で模索すべきであり、軽量級の家畜の一時的なと畜禁止では目的を達成できない」と、国家畜産計画の不在を継続して非難している。


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