上期の畜産部門は堅調に推移 ● フィリピン


2005年上期の農業生産は1.3%のプラス

 フィリピン農務省農業統計局(BAS)は、7月中旬に2005年上期の農業生産状況(水産を含む)を公表した。それによると、畜産部門や水産部門は昨年同期を上回ったものの、昨年来の干ばつや台風などの天候不順のため、作物部門において前年同期を1.7%下回る生産となり、農業全体としては1.3%の増加にとどまった。作物部門の約3割を占める米はほとんど前年同期並であったが、合わせて同16%となるトウモロコシとサトウキビの生産がそれぞれ前年同期比約15%の減産となったことが大きく影響した。


畜産部門は3.0%の伸び

 一方、畜産部門は、水産部門の5.1%の伸びに次いで3.0%の伸びとなった。これは、牛や水牛の生産がマイナスとなっているものの、これらの畜産に占める割合は合わせても9%と低く、合計すると8割を占める豚と家きんがそれぞれ約1.9%と4.1%の伸びを保ったためである。特に家きんのうち鶏肉については、周辺国において鳥インフルエンザが発生する中で、上期まで未発生国であったことが生産に有利に働いたものと考えられる。畜産部門の約3%の伸びは2004年通年の伸び率1.6%を上回っており、本部門は、2005年上期においては、概して堅調に推移したと言える。


畜産物農家販売価格は総じて上昇

 畜産物の農家販売価格は鶏卵を除いて上昇した。上昇の幅は4%台から20%台と幅広いが、中でも牛は前年上半期がキログラム当たり54.14ペソ(108円:1ペソ=2円)だったものが65.33ペソ(131円)と20.6%上昇し、同様に水牛も42.98ペソ(86円)から49.94ペソ(100円)と16.2%上昇した。これらは生産が前年同期を下回っており、供給の減少が価格上昇の原因の一つと考えられる。

 一方、鶏卵価格は、キログラム当り、66.55ペソ(133円)だったものが63.80ペソ(128円)と約4%低下した。鶏卵は前年同期比8.7%増の生産がなされており、供給が前年を上回った。下表の卵にはアヒルの卵も含まれるが、畜産部門でのシェアは9%と低く、他の畜産物の価格上昇に吸収される形となっている。

フィリピンの農業生産


政府はエルニーニョが原因と説明

 BASは2005年当初の見通しとして、年間の農業生産の伸びを4%と見込んでいたが、今回の結果を受けて3〜4%に修正するとした。また、作物部門の不振を、ペルー沖の海水温度の上昇により世界各地に気象の変化をもたらす「エルニーニョ」が原因とし、昨年10月からその影響により国内の各地で干ばつが発生し、十分な降雨が得られなかったため、作物の減収につながったと説明した。これについては、気象要因だけではなく、政府の財政難による農家金融支援の制限や種子改良の停滞のほか種子不足も原因と指摘されている。


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