人的被害にAIへの警戒強化 ● インドネシア


9月にAI犠牲者4人目の疑い例発生

 インドネシアにおける鳥インフルエンザ(AI)の最初の発生は、2003年の8月ごろとされており、以後2004年2月ごろまではジャワ島を中心に月間の処分羽数が2百万羽にも上る大規模な発生が続いたが、ワクチン接種などによる政府の対策などもあり、その後は散発的な発生となっていた。 

 このような状況下で、7月に首都ジャカルタの西のバンテン州タングラング市において、38歳の男性と2人の娘がAIにより死亡が確認されるまでは、AIの発生から約2年間、人的被害の報告はなかった。

 このため、AIによる死亡患者の発生に関しては、マスコミなどの取り扱いも大きく、国民は感染への警戒を強め、鶏肉製品などの消費が大きく減退した。このような中、政府は、これまでの対策を見直すとともに、感染への恐怖に関しては「人から人には感染しない」と鎮静化を図る一方、家きん製品の需要の落ち込みに対しては、「加熱調理すれば安全」と説明を行っている。

 しかしながら、その後、9月初旬に死亡した37歳の女性がAI特有の症状を呈していたため、この女性もAIにかかっていたのではないかとの疑いが持たれており、香港の検査機関のサンプルの分析が行われている。政府は当面、監視の強化など、AIへの警戒を高めなければならない状況にある。


解明されない最初の人的被害例

 同国における7月のAIによる最初の人的被害の例は、犠牲者の自宅が4月にAIの発生した農場から15キロメートルも離れていること、男性の職業が政府の会計検査院の監査員でありウイルスとの直接の接触が考えられないこと、罹患した3人を除く家族に異常がないこと、また、この男性が接触した約300人にも異常が認められないことなどが明らかになっており、感染の経路が不明となっている。また、被害者の住居の近くで採取された鳥の排せつ物からはH5N1のAIウイルスが検出されたとしているが、決定的な因果関係は確認されていない。


鶏肉消費量が大幅に減少

 7月にAIにより犠牲者が発生したことに関して、報道機関が大規模に取り上げたこともあり、家きん製品の消費に大きな影響が出た。大消費地であるジャカルタ市の畜産物の衛生担当者によると、同市に搬入される一日当たりの鶏の羽数は通常平均60万羽であるが、AIによる死亡報道がなされた後、搬入羽数が約6割減少し、25万羽まで減少したとしている。このことに対して同担当者は、このような状況下では、生産者ばかりでなく、流通業者やレストランなども大きな影響を受けており、報道機関はAIの恐ろしさを伝えるだけでなく、AIウイルスは摂氏70度で死滅することも報じるべきだとしている。


政府は殺処分対策などを強化

 以上の状況に対して政府は、全国に44カ所のAI対応病院を設定するとともに、農業大臣通達(96/2004)の下での畜産総局長通達により防疫措置の強化を行い、発生農場から半径3キロメートル以内の家きんの殺処分と同20キロメートル以内の監視を行う対策を採用するよう決定した。また、政府は、2005年の予算の見直しを行い、1,040億ルピア(10億4千万円:1ルピア=0.01円)をAI対策費として国会に承認申請した。この中には、被害農家への補償などが含まれている。

 なお、これまでのAI対策は、発生農場から半径1キロメートル以内の家きんを全羽とうたの対象としたものの、生産者の経済的損失を考慮して選択的とうたや健康群へのワクチネーションによる方法も採り得るとしていた。


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