官民連携に係る4つの基本方針
米国農務省(USDA)は8月30日、全国個体識別制度(NAIS)の運用の一部について、家畜の移動履歴データを民間が保守することを可能とするため、官民連携に係る基本方針を公表した。今回公表された4つの基本方針は以下のとおり。
・家畜個体識別システムは、生産者および他の利害関係者に負担をかけることなく、48時間以内で当該家畜の出生地からの追跡を可能とすること
・当該システムの構築については、その容量および政府の役割が過度に増大することなく展開すること
・当該システムは、既存の科学技術を駆使し、また、今後新たな個体識別技術を導入するために十分な順応性があるものとすること
・ 家畜の移動履歴データは、各州や連邦家畜保険衛生当局の必要に応じ、直ちにアクセスが可能となるよう民間のシステムにおいて維持されること
生産者も官民連携を支持
USDAはこれまで、(1)米農務長官の諮問委員会である海外家畜疾病諮問委員会の下に特別な小委員会を編成し、(2)2004年には全国で関係者に対しNAIS実施に係るヒアリングを実施するとともに、(3)2005年5月にはNAIS方針案に対するパブリックコメント募集のための文書を発行−するなどさまざまな手段を通じて、NAIS運用における公表用データの入力を要求してきた。関係者からの反応は、当該システムへの広範囲にわたる支援が示され、さらに、コメントを寄せた多くの生産者からも、民間部門が移動履歴を運用することについての支持を得たとしている。
今後、生産者に対する秘密保持に関するヒアリングの後、同データベースにより、これまで非公式に保管されていた家畜追跡に関するデータなどの提供が可能となるものとされている。
ジョハンズ米農務長官は、今回の基本方針の公表に当たり、現在、全国の10万戸以上の農場が登録されている当該システムに対する支援が拡大することを歓迎し、同システムを進展させるため、産業界と密接に連携し、家畜の移動履歴情報が登録されたデータベースによりNAISが展開されることを期待すると述べた。
畜産団体の反応は賛否両論
また同日、各畜産団体は今回のNAISの官民連携による実施に対しコメントを公表した。全国肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)および全国豚肉生産者協議会(NPPC)は、NAISの実施においては生産者の権利と秘密を守ることを最優先課題とするとともに、産業界には最もそれを実践するための資質があるとするなど、官民連携による実施をともに歓迎する意向を公表した。
一方、小規模農家の保護などを求めているファーマーズ・ユニオン(NFU)のフレデリクソン会長は、民間による生産者情報の管理では、生産者、農場および市場にとって、私的な情報が漏えいされることにより被害を受けるリスクがある。NAISの進展と運営は、営利を目的とする者の収入源となってはならない。さらに、USDAはNAISの展開について、間違った方向へ進んでいると激しく批判する声明を公表した。
なお、これらの団体のコメントから、今回USDAが公表した方針は、家畜の移動履歴データを生産者団体が保守することを意図しているように推察されるものの、USDAは民間の具体的な定義などについて示していない。
◎FDA・USDA、牛の小腸の食品利用を認可
米国食品医薬品局(FDA)は9月6日、USDA食品安全検査局(FSIS)は同7日にそれぞれ、BSE予防対策に関する暫定最終規則を改正し、これまで牛の小腸全体を特定部位として扱ってきたことを見直し、回腸遠位部が除去されたことが証明された牛の小腸の食品および化粧品原料としての使用を認可することを公表した。
FDAは、当該規則のパブリックコメント募集期間中に提供された、牛の回腸遠位部を小腸から安定的かつ効果的に除去し得ることを示す科学的な情報に基づき、今回同規則を改正するとしている。また、今回改正された規則は、BSEの発生原因から食品などを保護する現行の規則と同等の水準を提供するものであるとしている。当該規則は、本年11月7日までパブリックコメントを募集するものの、10月7日付けで施行されることとなっている。
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