RR大豆の特許料支払い問題、再燃 ● アルゼンチン


モンサント社、欧州において訴訟へ

 モンサント社は、オランダおよびデンマークの港において、アルゼンチンから輸出された大豆が、ラウンドアップ・レディ(RR)大豆であるか確認するため、サンプル採取を行った。

 モンサント社は、アルゼンチンが支払いを拒否している特許料を、RR遺伝子を保護するパテントを持つ輸入国において、輸入業者などから徴収しようと考え、法廷の場で争うことを目的にサンプル採取を行ったとされる。

 これに対しアルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)のカンポス長官は7月1日付けプレスリリースで、「アルゼンチン政府は、RR大豆輸出に関するモンサント社の提訴に対し、当事者として出頭する用意がある」と発言した。

 アルゼンチン政府および農業団体はモンサント社と、RR大豆の特許料支払いについて協議を重ねてきたが、交渉は合意に至っていなかった。アルゼンチンで栽培される大豆のうち9割が遺伝子組み換え大豆で、その多くが自家増殖種子により栽培されていると言われている(「畜産情報 海外編」2005年6月号p21参照)。


1995年からの問題が継続

 モンサント社によれば、過去からの経緯は以下のとおりである。

1995年:
当時のアルゼンチンの法令に従って、RR技術に関する特許申請を行った。(筆者補足:アルゼンチンでは、94年に従来の特許法を改正した発明特許・実用新案法(以下「特許法」)が上院を可決しているが、その後世界貿易機関を設立するためのマラケシュ協定附属書1C(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定TRIPs)により多々修正された後、95年9月に公布された。しかし96年3月まで改正は続く)。

1996年:
アルゼンチンにおいてRR技術が許可され、国内の種子業者とライセンスおよび技術移転について合意し、RR技術の販売を行った。種子業者はこれによりRR大豆(RR遺伝子+RR技術)を販売した。ただし、これらのライセンスには国際的な販売権は含まれていなかった。

2001年:
最高裁において95年に改正された特許法の解釈上の論争により、特許申請は却下された。

2003年:
RR大豆を輸入する国において知的所有権に基づく新たな特許料の徴収方法を検討し始めた。

2004年:
2004/05年度の作付けが始まる前に、RR技術を特許登録している輸入国におけるライセンス制度を利用する旨を通告し、かつアルゼンチン種子業者に対し、RR技術のあらゆるライセンス料を2004/05年度の作付けから徴収しないことを9月に公告した。これと同時に、特許料の支払いについて、政府や関係機関と話し合いが持たれ、最終案は2004/05および2005/06年度の作付け分に対しては、1トン当たり1ドル、2006/07年度の作付け分から特許の保護期間終了まで大豆の国内価格の最高3%までのライセンス料が検討された。

2005年:
結局1年間合意が得られない状態が続いたため、輸出入業者に対し「RR技術のライセンスがない南米産大豆が、モンサント社が知的所有権を有している国において輸入が確認できた場合、その輸入国において損害賠償を要求する法的措置を開始する権限を当方は所持している」旨の書簡を送付した。


RR技術の対価請求を種子から特許へ

 またモンサント社は7月4日には以下のプレスリリースを出し、自社への理解を求めている。

(1)特許申請したが、特許法の変更によって発生した行政上の理由によりその申請が却下された。
(2)RR技術に関して特許料を今まで二回徴収したことはないし、これからもない。
   よって2004/05および2005/06年度には現地種子業者に対するライセンス料の徴収も廃止した。
(3)1トン当たり15ドルのライセンス料を徴収する気も、
   過去にさかのぼってライセンス料を請求する意図もない。
(4)国内および国際法規において、種子法と特許法が両立しており、それを尊重されることを期待する。
(5)零細農業への免除などを考慮する用意がある。

 なおSAGPyAの担当者によれば、すでにデンマークにおいてモンサント社は法的措置に訴えているとのことである。


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