生産者販売価格、1年間で約13%下落
ブラジルでは、牛の生体価格などの下落が継続している。
例年、牛生体価格は5月前後を底に、牧草状態が悪くなる6〜8月ごろには上昇していく傾向にある。しかし、今年は価格が反転しないまま、かつ下落に歯止めがかかる傾向が8月中旬時点でも見られない。
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)によれば、7月の生体牛の生産者販売価格は、1@当たり53.4レアル(約2,510円:1レアル=47円、1@(アローバ)は15キログラムで取引単位)となっており、前年同月の61.3レアル(約2,881円)を12.9%下回っている。
また、民間会社のデータ※によれば、8月19日は52.0レアル(約2,444円)、同月26日は51.0レアル(約2,397円)、9月2日は50.0レアル(約2,350円)となっており、上昇傾向に転じているとは見られない。
価格の下落要因は複雑
価格の下落要因として、供給面ではと畜牛の供給過剰、需要面では輸出におけるレアル建て輸出単価の低下、また国内消費の停滞や副産物としての牛皮や骨粉などの価格の低下−などが挙げられているが、以下に主な要因を分析する。
○牛の過剰供給について
と畜牛の供給が過剰になったため、価格下落を招いていると解説されることが多い。
ブラジル地理統計院(IBGE)が公表している2005年第1四半期までのと畜頭数は649万頭であり、2004年同期の597万頭より8.7%増の約52万頭と確かに増加している。
ただし、2003年の第1四半期のと畜頭数は531万頭であり、2004年同期は約66万頭の増であったことから、2005年同期におけると畜増頭分は、2004年同期分より下回っている。
以上から見れば、と畜の増頭分は、特に2005年においては、需要に見合っていたかが問題になるようだ。
なお第2四半期以降のIBGEのデータは発表されていないが、先の民間会社は、今年初めの乾燥気候による牧草不足や期待した価格の上昇が見られなかったことによりと畜頭数がさらに増加し、またフィードロットやセミフィードロットからの供給頭数が近年増加していることも、価格が下落した要因ではないかと分析している。
また、牛肉枝肉生産量もIBGEの第1四半期データに従えば、2005年は前年より約10万トン、2004年はその前年より約13万トン増加している。
○輸出について
2004年に引き続き2005年も輸出の増加傾向は続いており、1〜7月で前年比24.5万トン 、28.5%増(生鮮および加工肉、枝肉換算)※となっている。
しかし輸出パッカーにおけるレアル建ての輸出単価は、大幅なドル安のため減少している。例えば2005年と2004年の7月を比較してみると、ドル建ての輸出単価は1.7%減(1トン当たり2,204ドル→2,167ドル)であったが、対ドルレートが22.0%のドル安レアル高(1ドル=約3.04レアル→約2.37レアル)となったため、レアル建ての輸出単価は
23.2%減(1トン当たり6,694レアル→5,141レアル)となった。これによりパッカーの収益性が落ちたため、生体牛取引価格も低迷しているとも見られている。
ブラジル全国農業連盟(CNA)の常設肉用牛フォーラムのノゲイラ委員長は、輸出の急速な拡大にもかかわらず、輸出で得られる利益が生産者に還元されていないことを非難しながらも「ドルに対するレアルの過大評価が、最近の国内市場における肥育牛価格低下の大きな要因である」としている。
なお、直近のデータはないが、雌牛のと畜頭数が増加しているとの情報があり、畜産関係者からは、過剰な雌牛のと畜は中長期的な生産に問題を生ずる可能性があると、危ぶむ声が聞こえる。
※:FNPコンサルタント会社のデータ。
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