NZフォンテラ、生産者の株取得義務をより柔軟化


目的は、生乳の確保

 ニュージーランド(NZ)農林業省は先ごろ、NZの農業および林業の現状と将来展望(SONZAF)2005年版を発表した。その中で、フォンテラの資本構成の見直しやNZの乳業動向などについて述べている。その概略を以下に紹介する。

 フォンテラの資本構成の見直しは2005年5月の株主総会で可決され、2006年6月から実施される。資本構成の変更理由は、

(1)生産者は、フォンテラに供給する乳固形分1年分相当(乳固形分1キログラム当たり1株、フェア・バリュー・シェアと呼ばれる)の株を取得する義務があるが、このフェア・バリュー・シェア価格と実際の支払乳価との差が大きくなり(フェア・バリュー・シェア価格のほうが高い)、このことが生産者の生乳生産意欲を阻害していること。

(2)株価の上昇によって、生産者は株の売却について興味を増しており、実際に株式を売却し、フォンテラ以外の乳業会社に生乳を販売する事例も出てきていること、また、酪農をやめて、農地を他の用途に転用することにも考慮の対象になってきていること。

(3)支払乳価の決定方法については、フォンテラの投資事業などの結果を総合的に考慮した上でなされているので、生産者にとって分かりづらいものになっていること。


生乳ピーク時対策に、価格政策導入

 変更内容は、

(1)キャパシティ・チャージ制度の導入

 フォンテラの生乳処理能力の関係から、生乳生産量のピーク時(9〜11月)の生乳生産を抑制する手段として生産者に対しピーク時にフェア・バリュー・シェアとは別の株式取得を義務付けたピーク・ノート制度を廃止し、キャパシティ・チャージ制度を導入すること。このキャパシティ・チャージ制度は、生乳生産量の季節的変動が小さい生産者に対して、季節的変動が大きい生産者よりも支払乳価をやや高くするという政策である。ピーク時の生乳生産抑制手段を、従来の株式取得の負担を生産者に負わせる方法から、価格によって生産者の生産調整を誘導する方法に転換するものである。

(2)コントラクト・ミルク制度の導入

 コントラクト・ミルク制度は、生産者が、出荷する生乳相当分の株の取得義務を負うことなくフォンテラに生乳を出荷できる制度で、フォンテラの年間集乳量の15%を限度としている。この制度の導入により、生産者からの生乳供給が柔軟に行われ、フォンテラはより多くの生乳の確保を可能にすると見ている。また、コントラクト・ミルク制度を利用して供給された生乳の支払乳価は、通常の乳価よりも低い価格で取引されることとなる。なお、この制度は3年かけて段階的に導入される。

(3)生産者に対し生乳生産の年ごとの変動を緩和するための株式取得要件の変更

 生産者は最大で現在の生乳生産量の20%の通常の株とは異なる超過株式を持つことができる。超過株式を有する生産者は、生乳生産量が通常のレベルを超えて一時的に増加したら、前年の生産量の20%相当分か、または前年の生産量からの増加量分の少ない方を供給できる。この制度を利用する場合の支払乳価は通常の乳価よりも低い価格で取引される。

(4)フォンテラの消費者向け製品販売部門であるNZミルクの透明性確保のため、バランスシートをフォンテラと分割したものを作成すること。


フォンテラ、デクセルの経営管理を支援

 一方、農場段階での持続可能な生産性の向上を図ることを狙いとして、フォンテラはデクセルと、デクセルの経営管理業務を支援することに合意した。支援期間は3年間。デクセルは、酪農部門の農場段階での調査研究や生産者に対する相談、教育などを行う団体で、生産者が100%所有する団体である。今回の合意により、フォンテラは、デクセルの経営管理に責任を持つこととなる。


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