豪州連邦政府委員会、豚肉産業に関する報告書を公表


マクゴーラン農相、追加支援の必要性を否定

 豪州連邦政府の経済政策諮問機関である生産性委員会は8月17日、豪州の豚肉生産および産業に関する報告書「豪州の豚肉産業」を公表した。また、同日付けで連邦政府のマクゴーラン農相は、政府答申を発表し、報告書と併せて連邦議会に提出した。

 提出に際しマクゴーラン農相は、豚肉生産者および豚肉業界が直面するいくつかの課題を認識しているとした上で、連邦政府は直接および間接的に豚肉産業に対する支援を行っており、豚肉産業も、自助努力で問題を克服できると信じているとして、追加支援の必要性を感じていないとの見解を示した。なお、同報告書は2005年3月、連邦政府に対して提出されていた。


引き続き深刻な構造改革に直面との見方

 豪州の豚肉産業は、生産コストの上昇や構造改革の遅れから、輸入品との競合が年々、激化しており、生産性委員会の報告書でも、引き続き深刻な構造改革に直面することは避けられないとしている。

 同報告書によると、豚肉産業が弱体化した要因として、2002/03年度の干ばつによる飼料価格高騰で生産コストが上昇したことを挙げており、これが輸出競争力を大幅に後退させ、その後の停滞につながったとしている。また、主要通貨に対して豪ドル高で推移した為替相場も影響を与えたとみている。

 しかし一方で、これらはすべて外的要因であり、連邦政府の干ばつ対策により農業全体への影響は緩和されたとしており、豚肉産業だけが特別な被害を受けたのではなく、その産業構造自体に問題があると結論付けている。

 また、報告書では、豪州産豚肉の利点として、主要消費地であるアジア諸国に近く、豪州が持つ“クリーン”で“グリーン”なイメージを挙げているが、一方で、高い飼料コストとスケールメリットの小ささが国際競争力の阻害要因としている。


連邦政府の支援は主要輸出国並の水準

 豚肉業界に対する連邦政府の支援状況について報告書では、輸出市場調査や環境問題への対応、国産製品のアピールなど数々の施策を講じており、また、諸外国とのFTA交渉など農産物輸出に対する輸出環境改善に努めるなど、政府の支援は直接、かつ、間接的に十分に行われているとしている。

 さらに、デンマーク、米国など海外の主要豚肉輸出国における政府の支援状況についても、内容的には豪州と同程度であり、豪州の豚肉産業のみが政府の支援を受けていないという事実はないとしている。


国内豚肉団体、報告書の認識に誤りと反論

 これに対して、豪州の豚肉生産者団体であるオーストラリア・ポーク・リミテッド(APL)は8月17日、生産性委員会の報告内容について認識に誤りがあると反論した。APLのスペンサー最高経営責任者(CEO)は「生産性委員会は、この報告書の取りまとめに際し、机上で算定を行ったにすぎず、産業の実態を把握していない」と述べ、報告書の内容が現実的でないと批判した。また、報告書に記された主要輸出国における豚肉生産への支援に触れ、特に豪州への豚肉輸出が増加するデンマークについて、「同国の豚肉生産は、さまざまな面で豪州以上に支援を受けており、豪州の豚肉産業は決して恵まれた環境ではない」と反論し、引き続き問題解決への支援を求めていく考えを表した。

 豪州の豚肉生産額は、農業生産額全体のわずか2%、9億豪ドル(765億円:1豪ドル=85円)と食肉産業の中では最小規模である。また、豚肉の生産量は、養豚の大規模化により年々増加傾向にあるが、国際競争力の弱体化により輸入量が増加し、1970年代には4万戸弱を記録した生産農家も、現在では3千戸まで減少している。このため、APLを中心に、豚肉産業の立て直しが急務となっている。


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