輸入依存が進む牛肉産業 ● フィリピン


牛肉需給の現状

 フィリピンの食肉需給においては豚肉や鶏肉が大勢を占めるものの、農村部の零細経営では養牛が盛んであり、中でも政府の振興政策などにより水牛の飼養が他のアセアン諸国に比べて盛んであることが特徴である。

 フィリピン農務省農業統計局が公表した資料によると、2004年の牛飼養頭数は260万頭、水牛は327万頭とされ、飼養頭数20頭を超える経営を商業的経営体とした場合、このような経営は水牛では全体のわずか0.2%、牛でも6.4%にすぎず、大部分はバックヤードファームと呼ばれる零細経営が占めている。

 豪州などから肥育素牛を導入するフィードロット経営が商業経営の主体であるが、同年の生体牛輸入頭数は前年比45%減の5万4千頭となっている。

 一方、同年の国内生産量は、水牛肉は8万トンで、前年比で12%増加しているが、牛肉は17万9千トンで前年に比べおよそ1%減少している。

 牛・水牛肉とも輸出実績はなく、国内需要を満たすため輸入量は近年どちらも増加傾向で推移している。水牛肉はそのほとんどがインド産であり、水牛肉の需要量の45%である6万5千トンを輸入しており、これは前年比22%の大幅な増加となっている。牛肉は需要量の20%である4万7千トンが輸入され、主な産地はブラジル、豪州、ニュージーランド、米国などで、こちらも前年比36%の増加となっている。

 なお、水牛飼養頭数は牛および水牛を合わせた全体の約6割である一方、食肉供給量はおよそ4割を占めるにとどまっていることから役畜としての水牛利用の実態がうかがえる。

 同年の生体重換算による生産者販売価格は牛肉がキログラム当たり59ペソ(118円:1ペソ=2円)、水牛肉が同47ペソ(94円)となっており、共に2004年3月以前は堅調に推移していたが、同年4月以降値上がりを始め、年間平均で前年比1割程度の増加となっている。同様にマニラ市内における牛肉の年間平均小売価格は同189.3ペソ(379円)となっている。


中国産牛肉輸入監視を強化

 今年に入り、中国で口蹄疫(FMD)の発生が繰り返し報じられる中、FMD撲滅や進入防止対策の一環として、農務省は7月18日、中国、香港、台湾からの偶蹄類動物由来製品を輸入する際の規則を公表した。

 現在これらの地域には、冷蔵・冷凍牛肉の輸入に関するフィリピン政府の承認を受けた加工場は無いが、承認を受けた工場から加熱加工品や缶詰製品のみが輸入できる。ただしこの際も、両国の検査当局の証明が必要とされ、ラベルには製造日やフィリピン仕向け品である旨の記載が必要とされるなどの規則が定められている。


BSE発生国からの輸入対応状況

 また、同国は牛肉輸出国におけるBSE発生に対しての措置として、カナダについては牛、羊およびヤギの生体輸入、これらの肉および肉製品、凍結受精卵、肉骨粉およびその他の飼料原料について2005年1月17日付けで一時輸入停止措置を行い、その後4月28日付けで同措置を解除した。輸入再開の条件としては、(1)特定危険部位(SRM)を除去した30カ月齢未満の骨なし牛肉に限る、(2)起立不能の臨床症状を呈しない牛由来であること、(3)と畜月齢の証明を政府機関などにより行うこと、(4)と畜日または製造日をパッケージに明記すること−とされた。

 米国産牛肉については既に30カ月齢未満のSRMが除去された骨なし牛肉に輸入が限定されていたが、BSE陽性牛の再発見を受けて6月27日付けで同24日以降に出航した積荷について輸入停止措置を行い、その後7月20日付けでカナダと同様の条件を付して輸入停止を解除した。

 再開の理由としてはそれぞれ危険性が極めて低いためなどとされている。 

 なお、2003年の牛肉輸入全体に占める割合は両国合わせて4%程度となっている。


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