進まない集中養豚地域化計画 ● マレーシア


上昇した豚農家販売価格

 マレーシアの豚の農家販売価格は、昨年9月に生体100キログラム当り477リンギ(13,833円:1リンギ=29円)と直近での最低価格を記録した後、一貫して上昇傾向で推移し、今年の7月には同600リンギ(17,400円)と昨年9月に比べ26%も上昇した。小売価格においても、同じ期間でキログラム当り10.2リンギ(296円)であったものが13リンギ(377円)と同27%上昇している。いずれも、これまでの最高値となっており、生産者の団体である畜産農家協会連合(FLFAM)は、この価格上昇は、原油価格上昇などによるコスト上昇だけでなく、さまざまな規制によって豚の生産が伸び悩んだ結果の供給不足が原因であるとしている。


大幅に減少した養豚場数

 FLFAMによれば、養豚場数は年々減少しており、1996年に3,452農場だったが2004年には678農場(いずれも半島部の数値)と8割も減少している。この間には1998年と翌年のニパウイルスによる豚の大量処分とその後の養豚に対する規制措置が大きく影響している。生産頭数を見ると1998年の235万頭から翌年は137万頭に激減した。また、2003年にはそれまで採っていた養豚規制に加えて2007年までに集中養豚地域化(IPFA)計画を実施するとしており、生産者にとって厳しい状況が続いているとしている。


進まない集中養豚地域化計画

 政府は、1989年に州ごとに異なる養豚政策を調整すると同時に養豚の近代化と環境対策を含む集中養豚地域化計画を定めた。これには、養豚が既存の養豚地域で行われること、イスラム教徒の住居などから離れていること、汚水処理などの施設を整備していることなどが規定されている。その後、環境への関心が高まり、2003年には本計画を2007年1月1日を期限として実施することを決定した。この時点では、養豚廃業者へのほかの畜種や耕種への転換支援などが計画されていたが、その後、詳細な内容は発表されないままとなっている。

 このような状況に対して、FLFAMは、地域の指定などの具体的な内容の詳細が明らかにされないままでは、先行しているネグリ・センビラン州以外では、計画への対応は不可能であり、この計画の廃案または実施期限の延長が必要であるとし、政府に申し入れた。


DVSが改めて環境規制通知

 獣医畜産局(DVS)セランゴール州事務所は、7月19日付けで同州の養豚生産者に対して3カ月以内に養豚施設からの排水中の生物化学的酸素要求量(BOD)を50ppm以下にするよう改めて通知し、対応できない場合には、農場を閉鎖するよう指示したとされている。この措置に関してFLFAMは、同州の養豚場130カ所のうち111カ所は対応できないとし、規制値を250ppmにするべきだとした。また、基準に合致するためには新たに汚水の処理施設などの導入が必要であり、その費用は3千頭規模の生産施設では約50万リンギ(1,450万円)を要するため、DVSの要求を満たすのは困難だとしている。

 また、集中養豚地域化計画の詳細が明らかでない中で施設を建設するのは費用が二重に発生する危険が生じると政府の対応を批判している。

 なお、DVSの設定するBODの基準値50ppmは、日本の水質汚濁防止法で定められている豚房50平方メートル以上での基準値160ppm(日間平均120ppm)よりも厳しい設定となっている。


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