連邦控訴裁、食肉パッカーの肉牛販売合意は合法と判断


連邦控訴裁、連邦地裁の決定を支持

 米国連邦控訴裁判所における陪審団は8月16日、全米最大の牛肉パッカーであるタイソンフーズ社の系列会社であるタイソン生鮮食肉会社(Tyson Fresh Meats,Inc)が、肥育牛の調達において実施している食肉パッカーと肉牛生産者とが交わす販売合意(marketing agreements)に関する訴訟について、先の連邦地裁の決定を支持し同社の販売合意は合法であるとの判決を満場一致で下した。

 今回の控訴裁は、96年に肥育牛生産者集団らが、当時のIBP社(2000年にタイソンフーズ社に吸収合併)が実施する販売合意に基づく肉牛取引が米国における肥育牛価格を不当に操作していると主張し、アラバマ州の連邦地方裁判所に対し「Packers and Stockyards法」の下、不法な協定の締結を抑制するよう提訴したことに端を発したものである。2004年2月、いったんは陪審団により原告の要求を認める評決が下されたものの、その後連邦地裁のライル・ストロム裁判官が当該判決を覆す決定を下したため、原告側が再び上訴していた。

 これに対し、原告側は今回の判決を不服とし、連邦最高裁への上訴を含め今後の対応について検討するとしている。


販売合意は適正価格取引を実現

 連邦控訴裁は、同社が販売合意の契約を締結するため、適正な事業同業者を確保していたことについて言及し、独自の肥育牛生産者との販売合意による取引契約が同法には抵触しないことを認定した。

 また、連邦控訴裁は、販売合意は牛肉パッカーに対し、(1)より確実かつ安定的な肥育牛確保の機会を提供し、(2)肉用牛の購入経費を縮減するとともに、(3)実際の品質に則した価格での取引の実現を促す、−ことは明白であるとした。一方、肉用牛生産者の損益が感情的に訴えられたが、同法は市場障壁から生産者の収入を保護するために制定されたものではないと述べた。

 今回の判決を受け、タイソンフーズ社のジョン・タイソン会長兼CEOは同日、同社の拠点となるアーカンソー州スプリングデールにおいて、「今回の決定は、われわれの家畜導入方法が妥当であるということを証明するものであり、非常に満足している。また、米国における肥育牛生産者がおのおの必要とする取引方法で市場に牛を流通させる自由を保護するものである」と述べた。

 寡占化が進展する豚肉や鶏肉産業に比べ、牛肉産業では肥育期間が長いことなどから、肉牛生産から食肉処理に至る供給体制の寡占化の進度は弱く、多くのパッカーと生産者の間で販売合意に基づく取引が行われている。当該肉牛価格に関する訴訟問題は長期化したものの、今回の連邦控訴裁の判決により、米国の肉牛取引形態に与える影響は最小限に食い止められたものと考えられる。


米国農務省も販売合意の拡大を指摘

 こうした中、米国農務省穀物検査・食肉流通部(USDA/GIPSA)が先ごろ議会へ提出した「事前取引に関する中間報告書」の中でも、パッカーと生産者による販売合意は、より高品質で均一な牛肉を求める消費者需要の拡大により増加したことを指摘している。また、このような取引形態が、(1)米国の牛肉および豚肉産業において、市場参入者の情報の共有と食肉供給チェーンの管理の改善、(2)食肉パッカーにおいては、と畜ニーズの確保と、肥育牛および牛肉の品質管理の保証−を可能とするとしている。

 一方、パッカーを会員とするアメリカ食肉協会(AMI)のマーク・ドップ主席副会長は、今回の連邦控訴裁の決定について、販売合意など市場主導型の調整は、特に製品の品質や一貫性など食肉の生産システムについての選択を消費者にゆだねるよう導くものである。このような事実は、消費者の食肉に対する信用を確実なものとし、潜在的に食肉全体の消費拡大にも寄与するとしている。


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