南半球最大の市場「クイーン・ビクトリア・マーケット」



ひとくちMemo

 1878年の開設以来、オーストラリア第2の都市メルボルン市民の胃袋を担う同市場は、今年で127年目を迎える。市内にある市場の中でも約7ヘクタールと最大規模を誇り、南半球最大を自負するだけに、1千を超える店が世界各国の食材をはじめ、食肉・畜産加工製品や鮮魚、青果、衣料、生活雑貨などを取り扱う。また、市場の食材を使った料理教室や名物店をめぐる市場ツアーも開催しており、市場活性化の原動力にもなっている。衣食のすべてを満たせるこの市場は、メルボルン市民にとって欠かせない存在となっている。

 市民のみならず、観光客も含め、年間9百万人を越える人々が同市場を訪れるとされる。


 碁盤の目のような道路が行き交うメルボルン市内の北西部に位置する同市場は、東京ドーム約1.5個分の広さを誇る。市場の正面入口には、牛や羊の姿がかたどられ、歴史と伝統を感じさせる。




 正面入口を入った食肉コーナー。市場開設より早く1869年には設置され、牛、豚、羊肉のみならず、内臓専門店などを含め20を超える店が競い合う。わき目も振らずになじみの店へ向かう人もあれば、各店舗を一回りして価格重視で店を選ぶ人など、お客さんもさまざま。最近ではアジア各国からの移民も増え、従来、市場に並ばなかった商品も増えてきた。とあるお肉屋さんは「価格競争ではスーパーには負けるかもしれないが、味と品質には絶対の自信を持っている」と、“食の都”といわれるメルボルンの台所を支えている自負を表した。



豪州人の定番、バーベキューセット。
ソーセージ、ハンバーガーなど大人4人でも十分なサイズのパックで合計8豪ドル(約700円)とお買い得。

高級品のラムは、人気商品の一つ。特に春先に生まれた羊は、肉が柔らかなことから好まれている。






 豪州も最近では、牛肉の消費が減少傾向といわれているが、それでも“畜産国”を象徴するかのように国民1人当たりの年間牛肉消費量は37.7キログラム(2003/04年度:ABARE調べ)と日本の3倍以上。食肉消費全体の4割弱を占めている。また、当然のように販売価格はキログラムでの単価。ステーキの定番である「Tボーン」はキログラム当たり9.49豪ドル(約830円)。

食肉販売店がひしめく中にあっては、ディスプレーの美しさも売り上げを伸ばす重要な要素。
写真左から牛モモ、豚ロース(いずれも10.99豪ドル=約960円)、牛ひき肉(6.99豪ドル=約600円)。
(注:1豪ドル=87円で換算)


 食肉コーナーを出ると、そこは、デリカテッセンのコーナー。世界各国の食材や、乳製品などさまざまな商品を提供する。また、買い物袋を抱えた人々が、腹ごしらえや一休みをするために立ち寄る場所でもある。市場ツアーの参加者は、このコーナーでさまざまな食材を試食し、世界の食文化の深さに驚かされる。














 同市場以外では入手するのが困難な商品も多く、レストランなどの料理人にとっても食材を求めるための重要な場所。特に、食肉加工製品やチーズなど乳製品の種類の豊富さはメルボルン随一といわれる。

シドニー駐在員事務所 横田 徹・井上 敦司

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