EU環境相理事会、加盟国のGM作物制限措置解除を否決


GM作物に関する欧州委員会の提案を初めて否決

 EUの環境相理事会は6月24日、一部の加盟国が実施している遺伝子組み換え(GM)作物の栽培などを制限している措置の解除を求めた欧州委員会からの提案を特定多数決により否決した。理事会がGM作物に関する欧州委員会からの提案を明確に否決したのは、今回が初めてのことである。

 EUでは90年代初めから、人の健康と環境を保護するため、また、安全なGM作物のEU域内での自由な移動を確実とするためGM作物に関する規則をいくつか制定している。EUでGM作物の消費、流通、栽培などが行われるためには、さまざまな評価、承認手続きが必要となる。

 消費、流通などが承認されたGM作物のうち、人の健康や環境にリスクがあると考えられ、これらに明確な理由を有する国にあっては、当該GM作物に対する制限措置を講じても良いこととなっている。


5カ国で制限措置を実施

 現在、制限措置が実施されているGM作物、実施国、措置の内容は以下のとおり。

  • グルホシネート耐性セイヨウアブラナ(MS1/RF1)−フランス−種子生産のための栽培
  • グルホシネートアンモニウム耐性Btトウモロコシ(Bt-176)−オーストリア、ルクセンブルグ、ドイツ−すべての使用(栽培、食料および飼料、加工)
  • グルホシネート耐性セイヨウアブラナ(Topas 19/2)−ギリシャ、フランス−輸入、保管、加工
  • 害虫抵抗性トウモロコシ(MON810)−オーストリア−すべての使用(栽培、食料および飼料、加工)
  • グルホシネート耐性トウモロコシ(T25)−オーストリア−すべての使用(栽培、食料および飼料、加工)

欧州委員から制限措置再検討の手紙を送付

 現在、制限措置を実施している国は、指令90/220/EECに基づき実施しているが、本指令は廃止され、指令2001/18/ECに置き換わっている。そこで欧州委員(当時の環境担当ヴァルストレム委員)は2003年12月、制限措置を実施しているこれらの国に対して、新指令に基づきその制限措置の再審査と、必要があればこれらの再提出を求める文書を送付した。これに対して、2004年第1四半期中に、ギリシャとオーストリアから回答があったが、そのほかの国からは何の反応もない状況であった。

 また、欧州委員会は、一部の加盟国において実施されている制限措置の対象となっているすべてのGM作物について、欧州食品安全機関(EFSA)に評価を依頼した。同機関は2004年7月、問題となっている作物に関するリスク評価には問題ないと結論付けている。

 この結果に基づき、欧州委員会は、制限措置の解除を求める提案を環境相理事会に提案することとなった。しかしながら、健康や環境に対するリスクを考慮する意見が多く、この提案は否決となった。


3つのオプションを検討

 今回の理事会の否決を受け欧州委員会は、(1)理事会に現在の提案を再提出する、(2)提案内容を変更し、理事会に提出する、(3)新しい規則を提案する−という3つのオプションを検討している。ディマス委員(環境担当)は、「欧州委員会は、最善の決定を行うために法的、科学的側面から検討することになる」とコメントしている。


MON603トウモロコシは欧州委員会の最終判断へ

 また同理事会において、害虫に耐性のあるMON603トウモロコシのEU域内への輸入と域内での加工および飼料としての使用を求める欧州委員会の提案があったが、特定多数決による結論が得られなかった。今後、本件については、欧州委員会に最終判断が委ねられることになる。


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