NLIS、7月1日から全国的に義務化実施 ● 豪 州


と畜場直行牛などに例外措置あり

 豪州では7月1日から、電子耳標を利用した牛の個体識別制度である全国家畜個体識別制度(NLIS)が、全国的に義務化された。

 これにより、農場から移動するすべての牛にNLISのタグ装着が義務付けられるとともに、家畜市場やと畜場ではそのタグを読み取る機器の導入が図られ、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が管理するNLISのデータベースに移動履歴が記録されることとなった。

 なお、現時点では、(1)ほとんどの州で、出生牧場からと畜場へ出荷される子牛にはテールタグなどの代替処置を認めること、(2)一部の州で、出生牧場からと畜場へ直接出荷される牛や同様に直接生体で輸出される牛については義務化の実施期日を延期するなどの例外処置を設けていること、(3)北部準州では群管理をべースにすることなどの例外措置−などがある。主要な肉牛生産地であるクインズランド(QLD)州でと畜場直行牛や生体牛輸出への義務化が実施されるのは、2007年7月1日からとなっている。

 NLISの全国的義務化は、2002年にビクトリア(VIC)州で初めて義務化されて以来、全国第一次産業大臣会議などでの種々の議論を経てようやく実現された。


QLD州はNLISタグへの補助なし

 NLISの全国的義務化に当たっては、肉牛飼養頭数の4割以上を占めるQLD州の動向が注視されていた。とりわけ、QLD州を除く各州では生産者のNLIS実施に伴うコスト負担増を軽減するため、NLIS用の耳標代について政府から補助金支出が決定されていたことから、QLD州の対応が注目されてきた。しかし、生産者からの要求にもかかわらず、現在のところ補助はなされていない。

※各州のNLIS用耳標代についての支援措置

  • VIC州:1個当たりの耳標代1.80豪ドル
          (補助額は未公表)
    (4月1日より価格引き下げ)。
  • SA州 :耳標1個当たり0.7豪ドル補助。
  • WA州 :耳標1個当たり1豪ドル補助。
  • NSW州:1個当たりの耳標代2.60豪ドル
          (補助額は未公表)。

QLD州の実施状況と問題点

 注目されたQLD州でのNLIS義務化は、いくつかの問題は生じているものの、現時点では、おおむね順調に進んでいるようにみられる。義務化開始からの1週間で生じたいくつかの問題点を紹介する。

  • NLISのタグの供給が遅れ、肉牛の販売に多少の影響が出たこと。

     一部の市場では、7月第一週の牛の取引頭数が非常に少なかった。これは、降雨による生産者の牛の保留意欲の表れによるものだけでなく、NLISタグの供給問題も原因にあるとされている。

     州政府は、事態を解決するため「クイックタグ」とよばれる緊急用のNLISタグを供給することで対処するとしているが、NLISタグの供給不足はすぐには解決しない模様である。

  • 豪州で最大規模のロマ市場では、NLISの読み取り装置のコスト回収の目的で、バイヤーに1頭当たり50セントの手数料を課す予定だったが、バイヤーがせりをボイコットしたため、これを撤回したこと。

連邦政府公約の2,000万豪ドルの使途

 一方、連邦政府はNLISの義務化に先立って、昨年行われた総選挙で支出を公約したNLIS関連経費2,000万豪ドル(17億4千万円、1豪ドル=87円)の使途について発表している。2,000万豪ドルは4年間でNLISの実施や管理経費として支出されるがこの使途は次のとおり

  • 肉牛産業:1,500万豪ドル(13億500万円)

    −1,300万豪ドル(11億3,100万円):各州や準州へ(資金の使途、分配方法はCCAやMLA、連邦政府などの代表から構成される委員会で決定)

    −100万豪ドル(8,700万円):NLISのデータベースの充実

    −100万豪ドル:研究開発やNLIS支援費

  • 羊、豚などの個体識別制度の開発:500豪ドル(4億3,500万円)



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