これまでは計画どおりに進展ベトナム政府は、5月末から6月にかけ、ハノイで共産党中央委員会の経済委員会とともに国家計画である「2001―2010社会経済戦略」の農業および農村の開発に関して検証する会議を開催した。この国家計画は、21世紀を迎えるに当たって、2020年までに同国を基本的に工業国化することを前提とし、2010年のGDPを2000年の倍に成長させるとするなど、意欲的な政策を盛り込んだ計画となっており、日本との経済連携協定(EPA)交渉にも何らかの影響を与えるものと思われる。 2002年のデータによると、同国の農村には人口の75%が居住するとともにその36%が貧困層とされ、都市部の7%を大きく上回っており、農業・農村対策は行政上も大きな課題となっている。 会議の中でカオデュクパット農業・農村開発相は、特に過去3年間の情勢について、農林水産分野の生産額に関しては、当初の計画を0.3%上回る年率平均5.1%の成長で推移しており、おおむね計画通りに進展しているとした。中でも、直近2004年の農業と水産分野の生産額は、加工産業と輸出市場からの需要により大きく伸び、農地1ヘクタール当たりの生産額は、2,200万ドン(153,846円:143ドン=1円)と2001年と比較して24%増加し、水産養殖分野では生産額が同29%増加するとともに輸出は同48.5%増加して67億ドル(7,504億円:1ドル=112円)になったとした。また、農地面積は全体として拡大したものの、稲作面積は33万8千ヘクタール減少したと述べた。そのほか、95%の地域に電力が行き渡るなどのインフラの整備の進展も報告した。 農業と農村の工業化・近代化の課題一方、会議参加者からは、農業が工業化・近代化する過程で、全国的に共通の問題が発生しているとの報告があった。具体的には、工業化のための用地に農地が転用されたり、都市化の進展で農地が縮小されたりしており、2000年から2003年の間に10万ヘクタールを超す農地が消失し、その結果、農地を失った者が失業者となっていると指摘された。 また、ヌグエンタング副首相は、農業の近代化について、基本的に、生産物の生産性や品質などが低く、さらに新技術の導入が遅い現状では、農業分野だけの取り組みには限界があり、その結果、商工業分野は農業に対して積極的に投資をしてこなかったとした。また、この問題は単に経済上の問題ではなく、社会や政治の問題でもあり、国家の安全保障にも関係すると指摘した。さらに、次期の実施計画の設定に当たっては、関係閣僚は傘下の機関や地方機関と計画を見直すとともに、立案した計画は確実に実施するよう指示した。副首相の発言の背景には、農村部のインフラを整備することにより、生産基盤の拡充と開発の障害の除去が進み、投資の増加によって雇用と農家経済の改善を図りたいとの意向があるとされている。 畜産による農家経済改善対策例農業・農村開発省傘下の国立農業普及センター(NAEC)は、家畜の正しい飼養管理を普及させることにより、農家経済の向上を目的としたプログラムを実施している。これは、家畜を飼養する農家の7割、少数民族の3割そして8割の女性が貧困層に属するとの統計結果に基づいて立案された。当プログラムは、農家が5カ月間の家畜の飼養管理講習を受け、持ち帰ったその知識を近隣の家畜飼養者に広めるというもので、タイビン、タンホア、ンゲアンの3県で実施されている。講習の受講者には1日当たり4千ドン(28円)の手当が支給され、それが素畜購入費用の一部となる仕組みとなっている。このプログラムは2004年から2006年まで実施される計画で、2004年の受講者は350人であった。今年の受講者は500人以上を予定している。 |
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