東北部は飼料作物の最大の生産地黒龍江省、吉林省および遼寧省の中国東北部は、肥よくで広大な土地を生かしたトウモロコシなど飼料作物の最大の産地となっている。中国統計年鑑によると、2003年のトウモロコシの生産量は1億1,583万トンで、うち吉林省は1,615万トン(全国第1位)、遼寧省は907万トン(同4位)、黒龍江省は831万トン(同6位)となっており、これら東北3省で全国の3割を占めている。 畜産の潜在能力を示し始めた東北部一方、中国の畜産でもっとも重要な養豚業が盛んな地域は、四川省(豚飼養頭数5,565万頭:2003年、全国第1位)、湖南省(同4,109万頭、第2位)および河南省(同3,914万頭、第3位)などをはじめとした中南部地域であり、畜産の生産現場とそれを支える飼料生産地を結び付ける上で、輸送距離が長いためコストと時間を要することが構造的な問題とされてきた。 しかしながら、こうした構図も近年は東北部やその近辺における畜産物の消費量が増加してきたことで変化しつつある。これに加えて、中央政府や省政府が東北部の畜産振興の推進のため、ブロイラーや牛肉などの輸出産業を育成するプロジェクトなどに乗り出す動きが見られるようになった。 吉林省の「食糧を食肉へ」キャンペーン中国農業大学の調査によると、中国で第一のトウモロコシの生産量を誇る吉林省において、省政府により二年前から「食糧を食肉へ」と題したキャンペーンが行われている。同省では、畜産物の生産力を高めることにより耕種農業による収益が農業生産の太宗を占める状況から脱却し、農民の所得を増大させる効果を上げている。同省の2004年の農民一人当たりの畜産物による収入は850元(11,900円:1元=14円)となり、収入全体の3割を占めるまでに増加しているという。吉林省は、2010年までに農民一人当たりの畜産業による収入を2,000元(28,000円)以上に増加させる計画である。 大規模な畜産加工基地建設も一方、黒龍江省ハルビン市の大衆肉聯集団有限公司はこのほど、東北部で最大となる大規模畜産加工基地の建設を始めた。投資額は5億元(約70億円)で、豚の年間処理能力は150万頭、また、食肉加工品については5万トンの製造が見込まれている。黒龍江省をはじめとした東北部は、首都北京はもとより天津など沿岸部の大都市にも近いことから、今後も全国最大の飼料の生産力を生かした食肉加工場や、輸出向けを含むブロイラーや牛などの大規模飼養場の設置が進むものと思われる。 |
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