干ばつによる出荷増で、肉牛価格は年初の2割安


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 肉牛市場取引価格は、ここ三年来で最安値 ● ● ●

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が発表する肉牛取引の指標となる東部地区若齢牛指標価格(EYCI)によると、干ばつによる放牧条件の悪化と飼料価格の高騰により、肉牛の市場出荷頭数は増加していることから、取引価格はここ三年来の最安値にある。10月は、本年1月から2割程度下落しており、米国でのBSE発生により豪州産牛肉需要が高まる前の2003年との比較でも1割程度の下落となっている。

 豪州の主要金融機関の調査によれば、この干ばつにより、2006/07年度の農家収入は4割減少し、1994/95年度以来の最低水準になると予測している。

EYCIと一日当たりの取引頭数

資料:MLA


● ● ● 日本向け上位品質の牛肉価格は、値崩れせず ● ● ●

 豪州の肉牛生産は放牧主体であることから、「降雨量により出荷頭数が左右される」と言われている。市場への出荷頭数は増加しているが、干ばつにより肉牛の品質が低下している。このため、日本向けグラスフェッド価格は、日本以外の市場からの引き合いが強いことから、必然的に上昇している。MLAでは、これから年末に向けて日本の牛肉需要はピークを迎えることや米国産牛肉の日本向け輸出量にも限りがあることから、豪州産牛肉に対する日本からの需要は、今後も力強いものが見込めるとしている。

チルドグラスフルセット価格

資料:MLA

 一方、干ばつによりフィードロット生産への影響について、飼料価格の上昇が大きな懸念材料となっている。豪州穀物協会(GCA)によれば、2006/07年度(7月〜翌年6月)冬穀物生産量は、前年度を6割程度下回る大幅な減産が予測され小麦価格については、現在、前年同時期の二倍近いとしている。このため、仕向け先の変更や収容頭数の削減などの動きも出始めている。


● ● ● 今後も天候面での改善は望めず ● ● ●

 今後の干ばつの状況について豪州気象局(BOM)によると、豪州全土の10月の降雨量は、例年を2割程度下回っている。特に主要肉牛生産地域の一つであるビクトリア州では、1987以来過去二番目の少雨を記録している。

 BOMが発表した向こう3カ月間(11〜1月)の短期予報では、豪州最大の肉牛生産地域であるクイーンズランド(QLD)州、また、ニューサウスウェールズ(NSW)州の天候は、例年に比べて乾燥気候が続くとの予報が出されている。中でも肉牛生産の盛んなNSW州の東部およびQLD州南東部における降雨量が例年水準を超える確率は、30%〜40%程度としている。このため、引き続き60〜70%の高い確率で干ばつとなる可能性が見通されており、厳しい状況が報告されている。


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