欧州委、ブルガリア、ルーマニアの2007年1月の加盟を認める報告書を発表


加盟に向けた準備状況の最終包括的監視レポートを発表

 欧州委員会は9月26日、ブルガリアとルーマニアのEU加盟に向けた準備状況に関する最終の包括的監視レポートを発表した。

 両国は、EUと2004年12月に加盟交渉を終了、2005年4月に加盟条約調印をし、2007年1月1日の加盟を目指していた。両国の法律や規則などの準備状況については、欧州委員会が監視し、その状況を定期的に公表している。欧州委員会が本年5月に発表したレポートでは、それまでより多くの点で改善が見られるものの、司法制度改革、不正対応などの点において、依然として問題が残っており、さらなる改善の努力が必要であると指摘されていた。その際に欧州委員会は、両国の加盟日は決定せず、最終レポートの状況を見て判断することとしていた。

 今回のレポートによると、両国は前回のレポートが発表されて以降、改善の努力をし、両国の2007年1月1日の加盟に向けた準備は整っているものの、まだいくつかの懸案事項があると報告している。欧州委員会は、この懸案事項として、司法制度改革、不正・組織犯罪に対する取り組み、農業分野での資金管理、食品安全などを挙げている。


農業補助金支給に関するシステムの整備

 今回のレポートで指摘された農業分野、食品安全に関する懸案事項は次のとおり。

 加盟国は、共通農業政策(CAP)の下での補助金の支給を適正に執行するため、各農家の所有農地面積、作物の作付面積、家畜の飼養頭数などを管理する「統合経営・管理システム(IACS)」を整備することとなっている。加盟国への農業補助金支給の約8割はIACSに基づき実施されている。

 欧州委員会は、両国でのIACSの整備状況がまだ遅れた状況にあることを指摘している。ブルガリアでは、農家の登録と土地を管理するシステムとの整合に遅れが生じ、加盟までにIACSがうまく機能しない可能性があるとしている。また、ルーマニアに関しては、前回のレポートで指摘された補助金の統括を行う組織の設置について、準備は整ったものの、職員の雇用や訓練のさらなる必要性、システムを操作する機器の整備、国内での補助金の管理・監視体制の構築などソフト・ハード両面での整備の遅れを指摘している。

 欧州委員会は9月26日、両国のEU加盟後も、資金管理やIACSの整備状況について両国が作成する報告書などにより監視し、問題があると判断した場合には、IACSに基づく補助金の25%相当の支給の削減を行う委員会規則(EC/1423/2006)を適用した。


EU基準に沿った動物副産物処理施設の整備

 前回のレポートにおいて、両国は、食の安全の確保の観点から、EUの伝達性海綿状脳症(TSE)規則にのっとった動物副産物の処理施設の設置が必要である指摘を受けていた。本件に関して両国とも、進歩は見られたものの、ブルガリアでは、TSEに関する効果的な対策の実施を保証する必要があること、また、ルーマニアに関しては、レンダリング施設の設置期限として設定された本年11月までに、同国当局による承認などが困難な状況にあることを指摘している。なお、EU加盟までに安全性が確保できない食品施設については、加盟後3年間は、ほかの加盟国へ製品を輸出できないこととなる。

 また、両国では現在、豚コレラが発生しており、両国からのEUへの豚肉などの輸出は一時停止されており、加盟後も同疾病が完全に撲滅されるまで現在の措置を継続するとしている。


EUは約5億人の27カ国体制に

 EUの外相理事会は10月17日、本報告書を承認した。これにより、EUは2007年1月1日より、約5億人の人口を有する27カ国体制となる。


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