2007年の家畜疾病対策予算総額は1億9,334万ユーロ
欧州委員会は10月12日、2007年の家畜疾病対策予算を承認した。EUの家畜疾病対策は、伝達性海綿状脳症(TSE)をはじめとする、家畜および人の健康に影響を及ぼす家畜疾病の監視や撲滅などに取り組むものであり、2007年の予算総額は1億9,334万4千ユーロ(約292億円、1ユーロ=151円)となっている。これは、2006年当初予算に比べ4.3%の増額となっている。
特定家畜疾病対策に鳥インフルエンザ対策を追加
2007年予算の特徴としては、前年に引き続き10種の特定疾病対策を講じるとともに、鳥インフルエンザの監視対策予算を当初予算に盛り込んだことが挙げられる。
この鳥インフルエンザの監視対策は、EU25カ国すべてで2005年より実施されているものであり、試験研究機関における検体の検査費用の50%をEUが助成するものである。2006年には、EU域内外で野鳥を中心に高病原性鳥インフルエンザの感染が確認されたが、欧州委員会ではこの監視対策の実施により、感染源の早期の特定が可能となり、家きんへの感染拡大を防ぐことができたと評価している。
また、2006年に引き続き実施する10種の特定疾病対策については、加盟国より61件の計画が提出され、そのうち47件がEUの助成対象に承認された。内訳を見ると、最近の域内の発生状況などを反映して、ブルータングや豚コレラ対策などの予算が増加している。また、人畜共通感染症である狂犬病対策予算が大幅に増加しているが、これは、西欧での撲滅対策がここ数年でほぼ終了したことから、2007年は東欧、特に2004年の新規加盟国を中心に対策を講じることとしている。具体的には、狂犬病ウイルスが野犬などの野生動物を通じて拡大していくことから、野生動物にワクチンを含むえさを摂取させ、免疫を持つ野生動物を増やすことによる感染拡大防止策となっている。
家きんのサルモネラ対策予算は倍増
欧州委員会は本年8月、EU域内の家きんおよび卵でのサルモネラ保菌率を削減するための目標率を設定する規則と、同菌の削減のための手段を制限する規則を適用している(海外駐在員情報通巻731号参照)。このように、家きん分野でのサルモネラ菌対策を強化する一連の動きの中で、2007年には、対策に取り組む加盟国は前年の12カ国から18カ国に増加し、その対策予算は前年の約2倍となる912万ユーロ(約13億8千万円)となっている。
予算総額の3分の2を占めるTSE関連予算
TSE関連予算は、全体の3分の2に相当する1億2,864万6千ユーロ(約194億3千万円)となっており、これは2006年予算に比べ1.9%の減少となっている。内訳を見ると、TSE監視対策については同1.3%増の8,946万3千ユーロ(約135億1千万円)、BSE撲滅対策に同38.0%減の540万ユーロ(約8億2千万円)、スクレイピー撲滅対策に同1.0%減の3,378万3千ユーロ(約51億円)となっており、BSE陽性牛の減少に伴いBSE撲滅対策の予算が大きく減少している。
TSE監視対策については、現行では、24カ月齢を超えるリスクのある牛(死亡牛、緊急と畜牛、と畜前検査で臨床症状のある牛)ならびに30カ月齢超の通常にと畜される牛および18カ月齢超の通常にと畜されるヒツジやヤギを対象に検査を実施し、各加盟国が負担する額の100%を助成している。2007年には、これにシカを対象とした検査およびヒツジ・ヤギを対象としたBSE検査を追加することとしている。
EUの2007年家畜疾病予算の内訳
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