FSAが乳業分野での衛生対策の強化を通知 ● イギリス


 イギリスの食品安全分野の主管当局であるイギリス食品基準庁(FSA)は10月20日、抗生物質の残留基準値を超えた生乳などの取り扱いに関し、衛生対策を強化する文書を国内の関係者に通知した。


FVO、EUの衛生基準に従っていない施設を確認

 加盟国の食品事業管理者は、食品の生産・加工のすべての段階において、EUの食品衛生規則(規則EC/852/2004(食品一般)および規則EC/853/2004(動物由来の食品))の条件に適した管理、確認を行わなければならない。このため、加盟国は、この衛生規則を順守するための公的機関や食品安全監視システムの整備および運営が必要であり、規則に従っていない事案を確認した場合は、これを改善する適切な措置をとらなければならないこととなっている。

 EU食品獣医局(FVO)は6月中旬、イギリスの乳業施設を検査した際に、衛生規則に従っていない事例を確認したこと、また、そこで製造される乳製品の原料乳から、EU規則による残留許容基準値を超える抗生物質が検出されたことをFSAに通知した。

 欧州委員会はイギリス政府に警告するとともに、食品事業管理者および同国当局に対し、消費者へ問題の製品が渡らないことを確実にする対策を措置するよう繰り返し要求した。しかし、FVOが本年9月、再度、規則に従っていなかった乳業施設を検査した結果、依然としてEU衛生基準に従った措置をとっていないことが明らかとなった。


欧州委員会がイギリス当局に対し義務履行違反の訴訟を開始

 このような状況の下、欧州委員会は10月6日、本来であればイギリス政府が行うべき問題の製品の市場における流通禁止を決定した。また、同委員会は10月12日、同国の乳業施設が食品衛生基準に従っていなかったことに対し、同国当局が適切な措置をとらなかったとして、イギリス政府に対して義務履行違反の訴訟の準備を始めることを決定した。欧州委員会が特に関心を示している事項は、原料乳における抗生物質の残留値の判定方法に関するFSAとの見解の相違であった。

 イギリス当局は、欧州委員会の指摘に対する回答を5日以内に行うこととなっており、もし合理的な説明ができなかった場合、EUの条約により、同委員会は欧州裁判所に提訴することができる。


FSAが乳業分野での衛生対策の強化を通知

 欧州委員会は10月18日、抗生物質の検査に関する専門家による会合を開催した。ここでの勧告を受け、FSAは10月20日、乳業施設の衛生分野に関連する地方主管当局に対し、EUの衛生規則に関するルールを強化した対策を実施する文書を通知した。

 この通知には、乳業施設が衛生基準を確実に順守するため、原料乳の受け入れ時の抗生物質監視検査において陽性結果を示した場合の対応については、(1)抗生物質残留許容基準値を超えているかどうかを化学的な確認検査により再度確認、(2)原料乳の受け入れを拒否し、動物副産物として処分−のいずれかとすることなどが盛り込まれている。


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