8月および9月は乾燥気象に加えて高温で推移
豪州では、8月の気象が記録的な高温に加え、1900年来という記録的な乾燥気候となった。また、9月になっても平年を下回る降水量が続いたことから、南オーストラリア(SA)州、ニューサウスウェールズ(NSW)州およびビクトリア(VIC)州といった東部および南部州を中心として干ばつ状況が進行しており、2002年以来となる干ばつで農業への影響が拡大、深刻化している。
干ばつの影響により家畜のと畜頭数が増加、価格は下落
豪州統計局(ABS)によると、8月の肉牛(成牛)と畜頭数は、干ばつの影響により68万7千頭と前年同月を8%上回った。特にSA州およびVIC州では、それぞれ10%および27%と畜頭数が増加している。また、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、9月のと畜頭数も前年同月期の水準を上回って推移している。例年、8月および9月の肉牛取引は少ないものの、今年に限っては、大量の家畜取引が行われている。
8月のラムのと畜頭数は、157万6千頭と前年同月を15%上回った。特にSA州およびNSW州において増加が著しい。9月に入ってもこの傾向が続いており、同月のと畜頭数は2004年11月以来の高水準となっている。
こういったと畜頭数の増加は、干ばつによる牧草の生育不良、品質低下に伴う飼料不足や水量の制約といった家畜飼育環境の悪化、それに伴う家畜の生育状況の悪化に加え、不足する飼料を補てんするための穀物飼料価格が上昇した結果、畜産農家において家畜を保有しきれず早期の出荷を余儀なくされる状況となったためであるとしている。
一方、家畜取引価格は、出荷頭数の増加を反映して下落傾向が顕著となっている。10月初旬の牛の指標価格である東部地区若齢牛指標価格(EYCL)は、321豪セント/キログラム(約299円:1豪ドル=93円)で、8月初旬から約16%下落している。また、羊の指標価格である東部州トレードラム価格は、297豪セント/キログラム(約276円)で、7月下旬から約24%下落しており、この傾向が顕著となっている。
このような状況下、干ばつの影響が大きいVIC州やNSW州の家畜市場では、取引頭数が急増する一方、取引価格が大幅に下落したため、採算割れの状態での取引が行われており、また、今後降雨があったとしても飼料作物の回復には手遅れであるといった記事が報じられている。
なお、今後の価格については、すでに相当量の牛が市場で販売されたことから、これ以上、価格が下落する可能性は小さいとの見方もされている。
穀物生産量は大幅減が見込まれ、価格は上昇へ
こうした干ばつの進行に伴い、穀物生産見込み数量の見直しも行われている。豪州農業資源経済局(ABARE)が10月27日に発表した最新の冬穀物の収穫見通しによれば、2006/07年度(7〜6月)の生産量について、干ばつの影響がさらに深刻化するとの予測から、すでに下方修正を行った前回予測(9月)をさらに下回る1,358万トンとしている。これは前年度の生産量比で63%減と大幅な減産となる。生産予測を品目別で見ると小麦が前年度比62%減の955万トン、大麦が同64%減の359万トン、カノーラが同69%減の44万トンといずれも前年度に比べ半分以下になっている。中でも最大の生産量となる小麦については、過去に、大幅な減産となった1995/96年度の900万トンに次ぐ減産見込みとなっている。
政府は干ばつに伴う支援の意向を表明
干ばつによる農業の影響が拡大する中で豪州連邦政府は10月16日、干ばつによる被害が大きい例外的環境(EC)認定地域に指定された農家に対して、3億5千万豪ドル(326億円)の追加支援を行うことを発表した。また同24日、さらに5億6千万豪ドル(521億円)の追加支援を行うことを発表した。この結果、国内の農地の半分以上に当たる44地域(タスマニアおよび北部準州を除く5州)がEC認定地域の対象となるとともに、少なくとも2008年3月までの支援措置の延長、対象要件の緩和および拡充などの措置が講じられることとなる。豪州連邦政府は、2001年より干ばつ対策としてEC認定地域となった農家5万3千戸に対し、総額12億豪ドル(1,116億円)を収入補助や利子補給として投じている。
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