原油高により生産コストが上昇し酪農家が15%減少
タイ農業協同組合省(MOAC)は8月上旬、これまで、順調な需要の伸びとともに年々生乳生産が増加してきたが、近年の原油価格の高騰に伴う生乳生産コストの上昇により、既に全酪農家の15%に相当する3千戸の酪農家が乳牛の飼養を中止したと発表した。原油価格の上昇は、特に飼料価格の上昇と輸送費の増加を招いており、現行の販売基準価格である1キログラム当たり12.5バーツ(39円:1バーツ=3.1円)では生産コストを賄えない酪農家が経営をあきらめたとしている。ただし、畜産開発局(DLD)によれば、酪農をやめた農家の乳牛はほかの酪農家へ売り渡されるのが一般的で、酪農家の減少そのものが乳牛の減少や生乳生産の減少に直接にはつながらないとしている。
98年以来不変の取引乳価
乳業会社が酪農家から購入する生乳の価格は政府によって統制されており、98年に決定されて現在に至っている。タクシン前首相は8月上旬に大学でのセミナーの席で統制価格に触れ、決定当初の生乳生産コストは1キログラム当たり9バーツ(28円)であったが、今年1月時点では11.56バーツ(36円)に上昇しているとし、農業省と大学に生乳の品質向上と生産コストの削減を研究させるとともに乳製品工場建設計画の早期実現により生乳取引環境を改善したいとした。
酪農家の経営を改善するためには乳業会社の取引乳価を引き上げるのが即効性のある措置であるが、タイは豪州やニュージーランドとFTAを締結し、2025年には乳製品の関税を撤廃することとしており、安易な取引乳価の引き上げはかえってタイの酪農業の競争力を失わせることとなるため、採用しにくい状況となっている。
タイ石油燃料小売価格(バンコク)
余乳対策などに粉乳工場建設を閣議決定
政府は6月20日、閣議において、余乳などの対策のために粉乳工場建設の決定を行った。建設を行うのはタイ酪農振興公社(DFPO)とされ、サラブリ県の同機関所有の土地に1日当たりの生乳処理能力が400トンの工場を建設、年間300日の稼動を目指している。建設費用は乳製品の関税5年分11億バーツ(34億円)を振り向けるとし、2007年に着工し、竣工は2009年の予定としている。
政府はこれにより、4月と10月に学乳の休みにより発生する余乳を加工し、粉乳などの乳製品に仕向け、部分的ではあるが輸入品の代替にしたいとしている。また、粉乳工場を稼動させることにより、余乳発生の不安が取り除かれることから、酪農家の生産意欲が高まるとしている。
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