意欲的な豚の増頭計画に取り組むベトナム


2010年の飼養頭数目標は3,300万頭

 ベトナム農業農村開発省(MARD)は、米国全国種豚登録協会と共同で実施した豚の品種改良に係る会議において、同国における豚飼養頭数の増加に取り組むとともに、豚肉輸出量を現在の約17万トンから30万トン程度まで増加させる方針を表明した。豚の増頭については、4月に開催されたベトナム共産党大会でも計画が発表されたが、今回、改めて具体的な増頭目標と新たに輸出目標などが表明された。

 同国では現在、推定で約2,800万頭の豚が飼養されているが、MARDの計画によると、飼養頭数を毎年3.9%ずつ増加させることにより、2010年の飼養頭数を現在より約18%増の3,300万頭にするとしている。また、同国の豚は他国に比べ小さいため、大型化などの品種改良を行う必要があるとしている。このため、養豚場設備の近代化と新しい人工授精センターの設置などを計画しているが、精液については国内の生産量が需要をすべて賄える規模ではないため、養豚経営者に対し海外からの優良種豚の輸入を指導している。さらに、今後、経営規模の拡大を進め、大規模経営における豚の飼養頭数割合を、現在の25%から40%程度まで増加させるとしている。


新5カ年計画において畜産振興計画を策定

 同国では、ベトナム共産党大会が5年ごとに開催され、社会・経済などの開発計画が策定される。現在は、2001年に策定された2001−2010年社会経済開発戦略の下、2010年のGDPを2000年の2倍にするなどの目標が掲げられている。さらに、この長期計画を実施するために、5カ年の社会経済開発計画が策定されることになっている。今年開催された共産党大会では、新たに2006−2010年の社会経済開発計画が策定され、経済成長率について年平均8%程度を維持する方針などが決定されたが、農業分野の成長率は同3%、輸出は同16%を目標とすることも決定された。

 畜産については、大規模化と品種改良などを進めるとともに飼料の改善を図り生産性の向上に努めるとしている。MARDの畜産担当部局によれば、昨年の畜産分野における成長率は11.6%を示しており、総生産額は約19兆9,300億ドン(約1,395億円、1,000ドン=7円)で、農業総生産額に占める割合は約23%であった。今後、鳥インフルエンザ(AI)などの病気をコントロールすることも計画されており、農業総生産額に占める畜産部門の割合を、2010年には約3割まで高めることを目標にするとしている。

 また、新5カ年計画では、畜種ごとに2010年までの増頭目標などが定められており、特に同国の主要家畜である豚と家きんに対する増頭羽意欲が大きいものとなっている。豚については、飼養頭数を約3,300万頭まで増やすとともに、豚肉生産量を320万トン(生体重)にすることを目標としており、また、品種改良を進めるため種雄豚の選別を行うとしている。

 家きんについては、生産システムをより近代化することにより、総飼養羽数の目標を2億1,000万羽、このうちブロイラーの飼養羽数を1億7,500万羽に置く方針が決定されている。


飼料増産や家畜衛生対策の強化が計画達成への課題

 同国では、積極的な畜産振興計画を掲げているものの、解決すべき課題も多い。2003年の配合飼料の生産量は約360万トンであったが、これは国内における配合飼料の需要の約4割程度とされている。残りの約6割は、輸入に頼らざるを得ない状況であるが、新5カ年計画において飼料増産に向けた方針などは明示されていない。

 また、8月上旬に再発が確認されたAIや、今年1月以降、発生が多発した口蹄疫(FMD。「海外駐在員情報」第724号参照)などの影響も払拭するまでには至っていないのが現状である。同国では、9月に国内27省で3,300万羽の家きんを対象としたAIのワクチン接種が実施されたほか、FMD対策としては48省において、現在までに牛と水牛に300万ドース、豚に150万ドースのワクチンが接種されている。特に、FMDについては9月下旬にも、首都ハノイ近郊のフンイエン省で牛と豚の感染が確認されており、新5カ年計画達成に向け家畜衛生対策のさらなる強化が必要になっている。


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