ベトナム、10年越しでWTO加盟


10年越しのWTO加盟

 ベトナム政府は95年以降、世界貿易機関(WTO)への加盟を目指してきたが、国内法の整備や、重要課題となっていた米国との調整などを経て、11月7日、WTO一般理事会において150番目の加盟国として承認された。同国は86年に始めた経済開放政策であるドイモイ運動以来、大きな経済成長を続けてきたが、WTO加盟により一層の経済発展が期待されている。これまで加盟のための作業として、特に国内法の整備に時間を要し、商取引、特許(知的所有権)、投資、独占禁止など、20以上の新法を含む法律が整備された。なお、今後の手続きとしては、11月28日に予定されているベトナム国会において加盟文書が批准された後、30日を経過した年末には、内外ともに正式なWTO加盟国となるとされている。


課題は国営企業の合理化など

 同国がWTOに加盟することにより、通信などの国家管理部門を除いて国内産業は国際競争に直接的にさらされることになるが、現時点における同国のGDPの約4割は国営企業関連によるものとされている。また、労働人口を多く抱える農林水産業への影響も懸念されている。政府は10月中旬、2007年から石油製品やコンクリートなどこれまでの補助金による価格抑制政策をやめ、市場における価格形成に任せるとの方針を示した。この措置は、関税率を引き下げることによる関税収入の減少などに対応するためとされている。いずれにしろ、加盟による国際輸出市場の拡大と同時に国内市場は国際市場の動向により強く影響を受けることになり、これらに対する早急な対応が望まれている。


貿易は輸入超過が継続

 同国の貿易状況を見ると、別添の表1のとおり恒常的に輸入額が輸出額を超える輸入超過の状態が続いている。2004年の貿易額を見ると、原材料と工業製品の比較では、輸出ではそれぞれ約5割と拮抗しているが、輸入では原材料2割に工業製品約8割と圧倒的に工業製品の輸入額が多くなっている。また、原材料輸出のうち5割が鉱物性燃料などで、4割が食品および動物となっている。工業製品輸出では、雑製品が約7割を占めている。一方、輸入では、原材料輸入のうち5割が鉱物性燃料などで、4割が食料品および動物となっている。工業製品輸入では原料別製品と機械類などがそれぞれ4割を占めている。このように貿易では、相対的に工業製品の輸入が中心となっており、WTO加盟後の変化が注目される。

表1 ベトナムの貿易額


畜産物貿易はこれから

 このような中、食肉を中心とした畜産物貿易を見ると表2のとおりとなる。多くの途上国の場合、コールドチェーンが未発達なこともあり、国内における食肉流通は生体での輸送が主体であるが、ベトナムにおいては歴史的に臨海地域での加工による豚肉輸出が行われてきた。豚肉以外の輸出入に関しては鳥インフルエンザが発生した2004年に牛肉、豚肉そして鶏肉の輸入が増加したが、それ以前の食肉などの輸出入はわずかであった。今後の食肉需給を予測する上で、消費に影響を与える人口の増加や経済の状況などを見ると、世界銀行のデータでは、2005年の人口増加率は1%で前年と同じで低い伸びにとどまっているが、経済成長率は2004、2005年とも約8%と高い伸びを示している。これに伴い、1人当たりの所得も2005年には前年より15%増加して620ドル(73,780円:1ドル=119円)となった。一般に、所得の伸びは食肉消費の増加につながることから、同国もその可能性があることおよび同国が豚肉を中心とした生産振興を計画していること(「海外駐在員情報」741号参照)などから、WTOへの加盟は、今後同国の畜産物貿易に直接的、間接的な影響を与えるものと予想される。

表2 ベトナムの畜産物の輸出入


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