分業化が進むチェンマイ県の畜産(タイ)



ひとくちMemo

 チェンマイ県はタイ北部にあり、チェンマイ市は同国第二の都市として、また歴史を有する古都として多くの観光客が訪れ、畜産物の消費も多い。農業としては、果樹や花きなどの生産が中心となっているが、畜産では、大手インテグレーターの下での分業化された養豚と採卵養鶏が盛んである。またこの地方はミャンマーとラオスに接して山岳地形が多く、バンコクなどの平地よりも冷涼な気候となっているため、酪農も振興されている。一方、肉牛に関しては野草や稲わらを主体とした粗放的な伝統的飼養方法が継続されている。北部はタイでもトウモロコシの生産地であるが、この地方では補助的な作物となっている。



 今年は国王在位60周年で、記念する肖像画が至る所に飾られている。国王は酪農など農業の発展を願ってきた。


 チェンマイ市にある710年前の城郭の遺跡。旗は国王在位60周年を祝うもので、黄色は国王のシンボルカラーである。
 果樹園。この地方は水に恵まれ、地味が肥えており、果樹や花きの栽培農家が多い。樹高がそれほど高くないため、家畜の放牧はされていない。

 豚舎の内部。市街地から離れた場所に9棟の豚舎が団地化されている。1棟当たり5百頭を収容し、3〜5キログラムの子豚から140〜150キログラムになるまで肥育される。大手インテグレーターが預託しており、飼料も企業側が支給している。  豚のふん尿によるメタン発生設備。ガスは、発電に用いられる。各棟の管理者に電気として販売され、閉鎖型豚舎の扇風機に使用される。発酵後の残さの有機肥料としての商品化が検討されている。

 養鶏農家の壁に貼ってあったもの。左上から時計回りに、緊急時連絡表、閉鎖式鶏舎の許可証、検査済み証書、担当獣医師となっている。獣医師は契約している大手インテグレーターからの派遣で、巡回訪問を受ける。近隣には同様の養鶏場が10数カ所ある。

 養鶏農場の入り口に「立入り禁止」の表示、地面には石灰が散布してある。この農場は以前に開放式鶏舎で、鳥インフルエンザが発生したため、2004年に5千羽を殺処分した。現在は開放鶏舎から密閉方式に変更し、7千4百羽の採卵鶏を育てている。大手インテグレーターと契約しており、管理費が収入となっている。また、鶏舎のそばに養魚場を所有している。


 出荷前2週間の鶏を離れた所から1羽だけ公開してくれた。ひなで導入して23〜24週間飼育後、採卵鶏として出荷する。閉鎖式鶏舎にして電気代と設備費に費用がかかるようになった。


 近くの工場から購入したトウモロコシの皮を食べる乳牛。タイでは比較的冷涼な地方であるとされるが、それでも暑期の気温は高いため、暑さ対策は必要。ホルスタインの血量は92.5%が限度とされている。子牛を含めて42頭が飼育され15頭が搾乳されている。1日平均160キログラムの生乳を出荷している。


 この地方で多く見られる白色の在来種。草地や田の刈り取り跡で繋ぎ飼いされている。養鶏や養豚と比べると飼養方法は従来のままで、粗放的である
 搾乳装置。機械化を進め夫婦二人で作業を行っている。将来子どもが酪農を行うかどうかは不明とのことであった。

 稲わらの上に屋根をのせて保存している。比較的水が豊かな地方であるが、乾期の飼料確保は重要である。

 トウモロコシの畑。チェンマイ県の周辺は、トウモロコシの主産地ではないが、小規模ながら作付けされている。


 チェンマイ市郊外のボンサンウェットマーケットの豚肉販売風景。上方で回転するのは蝿よけ。ここでの食肉価格は、それぞれ1キログラム当たり豚肉300円、牛肉390円、鶏肉225円であった。
 小規模飼料工場の製造機械。養鶏と養豚用の飼料は大手インテグレーターが生産しており、この工場では乳牛と肉牛向けの配合飼料を生産している。


(シンガポール駐在員事務所 斎藤 孝宏、林 義隆)

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