EU農相理、家きん分野に対する特別市場対策の財政支援を承認


満場一致で50%の財政支援を承認

 EUの農相理事会は4月25日、鳥インフルエンザ発生による家きん肉および卵の需要の低迷に対処するために実施する加盟国での市場対策の経費に対し、EU予算からその50%を拠出する欧州委員会の提案を満場一致で承認した。

 同理事会によると、EUの消費者の鳥インフルエンザに対する不安の拡大により、家きん肉および卵の価格やそれらの需要の低迷から、家きん農家は甚大な被害を受けており、さらにEU25カ国における販売の見込みのない家きん肉の在庫量は32万トンにもなっているとしている。また、家きん肉の消費量について、EUのデータでは、通常と比べデンマーク、フィンランドで5%、キプロスで40%、イタリアで50%、ギリシャで70%それぞれ減少しているとしている。

 こうした状況の中、先月20日に開催された同理事会において、フィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は、新たな市場政策を検討することを表明していた(海外駐在員情報通巻713号参照)。今回の承認は、共通農業政策(CAP)に適用する“規則(regulation)”の改正としては、欧州委員会の提案が発表された3月29日から、最終の承認となる理事会での承認まで、1カ月にも満たないという近年例にないスピードでの承認となった。


EUの家きん分野における財政支援

 EUにおける家きん肉および卵に関する対策の財政支援は、家きん肉は規則EEC/2777/75、卵は規則EEC/2771/75において規定されている。これまでの両規則の第14条では、疾病の拡大を防ぐことを目的として、疾病が発生した農家における家きんの処分や移動の制限が課された農家の損失に対する補償に対し、EUが50%の財政負担をするものだけであった。

 今回は、両規則の同条を改正し、公衆衛生または動物衛生リスクに端を発した消費減退による深刻な市場の混乱に対処するため、各加盟国が実施する特別の市場対策についても、EUが50%の財政負担を行えるようにしたものである。

 今回の決定に際し、EUの負担割合について、欧州議会、南欧諸国、新規加盟国からは、100%の財政負担を求める意見も出ていた。これに関しフィッシャー・ボエル委員は、94年以降、緊急の市場対策に対するEUの財政負担は50%を超えるものがないとし、欧州委員会の提案どおり50%とした。

 改正された規則の官報への掲載後、各加盟国は、企画した対策案を、欧州委員会の承認を受けるため提出することになる。なお、承認前に加盟国においてすでに行われている対策を、今回のEUによる財政支援策として認めるかどうかについては、理事会による議論を踏まえた上で決定することとしている。


生産段階の支援から開始

 また、議長国であるオーストリアのプロール農相は、農相理事会終了後の記者会見の場で、具体的な補助対策の対象として、まず、種卵や種鶏の買い上げ・処分を挙げている。これは、消費が低迷する中において、これらを処分することにより、家きん肉、卵の生産の抑制と余剰在庫の減少が期待でき、また、豚や牛に比べ生産サイクルが短い家きんでは、その後の生産での影響が少ないためであるとしている。このほか、減産を強いられている期間が予定よりも長いような農家への補助も対象になるとしている。

 なお、余剰在庫の保管費用を補助する民間在庫補助に関しては、余剰在庫がそのまま残ることとなり、また、その在庫は市場に出回ることから、早期の解決策にはなり得ないが、検討の余地はあるとしている。


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