本年中にBSEルールの改正を目指す
欧州議会は5月17日、EUにおけるTSE(伝達性海綿状脳症)対策の根拠規則である「TSEの防疫、管理、撲滅に関する規則(EC/999/2001、以下「TSE規則」という。)」の改正案に合意した。今回の合意により、昨年7月に公表した「TSE指針(Roadmap)」に沿って欧州委員会が行ういくつかのBSE対策の見直し作業について、法的な環境が整うこととなった。
欧州委員会によれば、今後、TSE規則の改正案については、閣僚理事会での合意を経て夏休み前には施行される見込みとしており、これを受け、同委員会では、TSE規則の別表に規定する具体的なBSEルールの最初の変更提案を2006年中に行いたいとしている。
BSE対策の緩和につながる改正事項
今回の改正は、近年のEUでのBSE陽性牛頭数が減少傾向で推移していることや、BSEに関する科学的な知見が新たにそろってきたことを受け、EUの最優先課題である食品の安全性や消費者の保護に影響を与えない範囲で行うものである。
まず、BSE対策の緩和につながる事項の例としては、反すう動物向け飼料における魚粉の混入を一定水準までは許容する改正に合意した。現在のTSE規則では、一定の条件の下で反すう動物以外の動物に魚粉を給与することは認めているが、基本的には動物由来の成分が飼料中には存在してはならないと考えるゼロ容認(zero-tolerance)となっていた。
また、BSEの監視プログラムについても、対策の効果が十分みられ、公衆衛生にリスクを与えないと証明された加盟国においては、検査義務のある対象月齢や監視対象頭数を見直すことができることとした。
BSEリスクに基づく新たなカテゴリー分け
BSEリスクに応じた各国のカテゴリー分けの目的は、輸入国の公衆衛生および家畜衛生の保護を保証するために必要なカテゴリーに応じた貿易ルールを定めることである。このような貿易のための条件は、国際獣疫事務局(OIE)のBSEに関する国際基準(BSEコード)に定められており、2005年5月のOIE総会において、BSEリスクに応じたそれまでの5つのカテゴリー分けから、簡素化された3つのカテゴリー分け(カテゴリー1:無視できるほどのBSEリスクの国。カテゴリー2:管理されたBSEリスクの国。カテゴリー3:
BSEリスクが不明の国。)へと変更することについて合意されている。
今回の改正では、TSE規則におけるカテゴリー分けについても、OIEでの合意と同様に、新たな3つのカテゴリー分けへと変更することとし、これにより、今後の牛肉貿易における国際ルールにも対応できるようにした。なお、本カテゴリーに基づいたOIEによる各国のカテゴリー分け作業が2007年5月までに終了しない場合には、EUは、この新たなカテゴリー分けを主な貿易相手国との貿易において独自に適用することとしている。
BSE対策の強化につながる改正事項
BSE対策の強化につながる事項の例としては、機械的除去肉(MSM:Mechanically Separated Meat)の製造に関する規制強化が挙げられる。これまでは、TSE規則の条文上、MSMを、BSEリスクがわずかでもある国で、反すう動物の頭がいまたは脊柱から製造する場合のみ禁止していた。今回の改正により、前述の新たなカテゴリー分けで、カテゴリー2および3に分類される国では、反すう動物のいかなる骨からもMSMの製造を禁止することとした。ただし、2007年6月末までの移行措置として、TSE規則の別表の規定に基づき、現状ではすべてのMSMの製造を禁止している。
また、特定危険部位(SRM)として指定する部位について、現在のTSE規則では別表で規定しているが、このうち、脳、へんとう、脊柱についてはTSE規則の条文中で規定することとした。この結果、脳などのSRMの規定を変更するに当たっては、これまではフードチェーン・家畜衛生常設委員会の同意により可能であったものが、今後は、欧州議会による共同決定手続きを必要とすることとなった。
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