FAO、メルコスルの鳥インフルエンザ対策を支援


GF-TADsの枠組みの中での実施

 拡大メルコスル(ブラジル、アルゼンチン、ボリビア、チリ、パラグアイ、ウルグアイ)地域における鳥インフルエンザ早期発見を支援するプロジェクトに対し、国連食糧農業機関(FAO)が50万ドル(5,800万円:1ドル=116円)を投入することが、4月10、11日の2日間にわたりブラジリアで開催された南米南部農牧審議会(CAS:アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、チリ、ボリビアの6カ国で構成)の席で公表された。

 FAOラテンアメリカ・カリブ地域事務所によると、この「拡大メルコスル地域における鳥インフルエンザ早期発見のための緊急援助プロジェクト」は、国際獣疫事務局(OIE)およびFAO合同の取り組みである「国境を越えて伝播する家畜疾病の防疫を推進するための世界的フレームワーク(GF-TADs)」の枠組み内で、特に渡り鳥や野生の鳥の取引を通じて侵入する恐れのある鳥インフルエンザに対する早期警戒・早期対策強化のため、拡大メルコスルにおける情報の伝達・共有能力を向上させることを目的に2006年5月より開始され、18カ月間継続される。

 この目的達成には、(1)地域内外での渡り鳥や家きん舎の鳥との接触の可能性に対する知識を持つこと、(2)消費者に鳥インフルエンザの危険性を認識してもらうこと、(3)疫学的監視と研究機関の能力強化、(4)他地域との技術および情報ネットワークの構築―が必要としている。

 拡大メルコスル地域においては、鳥インフルエンザ予防のための衛生関連機関の強化を最優先事項としており、FAOのプロジェクトはこれを支援するものであるという。

 ラテンアメリカおよびカリブ地域では、養鶏産業は農業総生産額の13%を占め、そのうちの5割が世界最大の鶏肉輸出国であるブラジルであり、同地域内では養鶏産業に直接従事している200万人以上に加え、さらにそれ以上が飼料など関連産業に従事している。また、消費面で鶏肉はすでに同地域国民、特に都市部の低収入層の住民が摂取する動物性たんぱくの25%を占めるとされている。


CASでは地域戦略を策定

 一方CASでは、下部組織である常設獣医委員会(CVP)が、鳥インフルエンザに関するOIEの勧告や提唱を考慮し、同疾病予防に関して各国が実施している対策を見直し、協調の上改善し、地域全体の防疫計画を構築する上で各事項を検討するため、鳥インフルエンザ特別グループ(GIA)を召集、1月末に鳥インフルエンザ防疫地域戦略を策定している。  

 GIAにおいて、参加6カ国は、(1)地域における鳥インフルエンザウィルスの感染予防、(2)CVP加盟のいずれかの国で感染が発生した場合に備えたウィルス早期発見の方法および手順の開発、(3)最短期間で鳥インフルエンザフリー地域として回復するための管理・撲滅対策の決定―を目的に、鳥インフルエンザ感染予防システム、防疫監視システム、管理・撲滅対策、診断能力および資金調達に関する国内および地域レベルでの戦略ガイドラインに合意し、この結果、同地域戦略が策定された。

 CAS参加国はすでに世界における主要畜産地域であることから、家畜疾病対策を地域全体の取り組みと位置付けている。


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