肉牛市場取引価格、再び上昇基調に


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 日本の米国産牛肉の輸入再停止が影響 ● ● ●

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が発表する最新の肉牛市場取引価格によると、市場への出荷頭数減少などから、価格は再び上昇基調となりつつある。MLAが発表した肉牛取引の指標となる最新の東部地区若齢牛指標価格(EYCI:5月5日付)をみると、価格は前年同期比3.8%高のキログラム当たり354豪セント(312円:1豪ドル=88円)と、高水準で推移した前年を上回った。

 豪州の肉牛の市場取引価格は、天候要因の改善による生育環境が整ったことなどから出荷が抑制され、2005年8月には過去最高水準となるキログラム当たり416豪セント(366円)にまで上昇するなど高値安定が続いていた。しかし、10月に入り出荷頭数の増加時期となったことや、日本での米国産牛肉の輸入再開などを見越し、例年よりは高水準ながらも値を下げていた。

 しかし、2006年1月に再び日本市場での米国産牛肉の輸入禁止措置が採られたこともあり、価格は再び、上昇に転じている。

牛肉取引価格(EYCI)の推移

資料:MLA

 

● ● ● 肉牛生産者は出荷抑制の動き、今後の気象動向にも注目 ● ● ●

 価格上昇の要因の一つとして、豪州産牛肉に対する高い需要を背景に国内の肉牛生産者が出荷を大幅に抑制させていることが挙げられる。国内の肉牛生産者は、豪州産牛肉需要の拡大を背景に、過去2カ年の肉牛価格が相対的に高かったことから経営収支が大幅に改善され、今は多少のリスクを承知の上でも、ぎりぎりまで出荷を抑制させたいとの動きがある。

 このような中、豪州気象局(BOM)による短期予報(4〜6月)では、主要肉牛生産地域であるクイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州の降雨量は、例年に比べて少ないとの予報が出されており、今後、育成環境が悪化すと予測される中で、生産者はどこまで現在の状況を続けられるか注目される。


● ● ● 国内の牛肉産業からは悲鳴の声も ● ● ●

 一方、高水準で推移する肉牛価格は、国内の牛肉産業にとって経営環境に悪影響を及ぼしている。海外市場での豪州産牛肉に対する需要は依然として強いものの、一定の価格帯を超える取引が難しいことから、肉牛価格の上昇分をそのまま、取引価格に転嫁することは困難といえる状況にある。また、最近では、好景気を背景に賃金上昇が続く資源や運輸などの他産業への労働者の流出が加速しており、ある程度の技術が必要な食肉業界での人材不足も叫ばれている。業界からは、高騰を続ける肉牛価格に対しての悲鳴の声も聞かれ、早期の価格沈静化が叫ばれている。


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