ブラジル、鶏肉輸出減少への対策実施


2月の鶏肉輸出量は前月を下回る

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2月の鶏肉輸出量は前年同月比9.7%減、前月比7.9%減の19万331トンとなった。輸出額は、前年同月比では2.6%増となったものの、前月比15.0%減の2億2,465万ドル(262億8千万円:1ドル=117円)であった。

 ブラジル鶏肉輸出業者協会(ABEF)によると、輸出の減少は特にヨーロッパにおける鳥インフルエンザの拡大による鶏肉需要の減退を反映したものであり、このため輸入国のブラジル産鶏肉の在庫はブラジルの月間輸出量に相当する約20万トンに達していると言われている。2月の1トン当たりの輸出価格は1,180ドル(13万8千円)と1月の1,279ドル(15万円)から7.7%低下しており、輸入業者は既存の長期契約の見直しなどを求めているとしている。


業界はひな生産羽数の削減に踏み切る

 民間の生産部門では、この状況を切り抜けるには、生産調整を実施するしかないというのが大方の見方で、ブラジル養鶏連盟(UBA)やブラジルブロイラー用ひな生産者協会(APINCO)がひなの減産を呼び掛けている。UBAによると、事態の悪化から会員には2月に呼び掛けた5〜10%の減産を3月には15〜20%に拡大するよう勧告しており、これによりひなのふ化羽数は従来の1月当たり3億6,500万羽から3億羽に減少することが見込まれる。

 また、一部報道では、国内における通常の在庫は国内消費量の約10日分であるが、輸出不振により現在、3週間分に相当する約30万トンが在庫となっているとしている。このため、企業の中には、時間外や週末操業の停止、3交代制の実施の中止などによる工場の稼働率を落とすだけでなく、従業員に長期休暇を与えるほか解雇を予定しているところもあるとしている。


鶏肉および豚肉に対し、間接的な融資を実施

 こうした中、ブラジル農務省(MAPA)は3月17日、鳥インフルエンザによる輸出減少によるさまざまな影響が鶏肉および豚肉の価格に及ぼす影響を懸念し、EGF(農産物を担保とする連邦政府貸付)による3億レアル(約156億円:1レアル=52円)、年利8.75%のトウモロコシ貯蔵用融資の導入を発表した。

 EGFは本来、作物の収穫後の安値を避け、端境期の高値を待つ間に必要な資金を調達するため、収穫物を担保として融資される仕組みであるが、今回の計画では鶏肉および豚肉生産者に融資、これら生産者がトウモロコシを購入し、その在庫をEGFの担保とする形としている。この場合、トウモロコシの購入価格は最低価格またはそれ以上でなければならず、従って、トウモロコシ生産者は最低価格が保証され、鶏肉および豚肉生産者は低利の資金を利用することができることになる。融資対象者は生産者、組合および食肉関連企業である。

 一方、トウモロコシについては、第一期作の大幅な増産、順調な第二期作などから価格が低迷していることに加え、鶏肉部門のトウモロコシ需要の減少を予想した市場の中でさらなる価格の低下が進んでいる。

 こうしたことから、農業政策局のウェデキン局長は「養鶏、養豚生産者だけでなく、トウモロコシ生産者を支援することで二重の効果がある。需要があれば投入資金は5億レアル(260億円)に増額することもあり得る。鶏肉および豚肉は最低価格保証制度の対象ではないため政府は価格を支える手段としてEGFを間接的に利用することとした」と説明している。


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