豪州、中国との農業技術に関する協定を締結


今後4年間で総額550万豪ドルの支援、酪農が優先課題

 豪州農漁林業省(AFFA)は4月3日、中国政府との間で農業技術協力に関する協定を締結したことを発表した。協定の内容は、豪州から中国に対して今後4年間にわたり総額550万豪ドル(4億8,400万円:1豪ドル=88円)に上る農業分野での技術供与を行うというもの。

 今回の協定締結は、中国の温家宝首相の来豪にタイミングを合わせて行われたもので、調印式には、豪州連邦政府のハワード首相と温首相が出席し、両者が見守る中で行われるなど、今後の両国のFTA締結への出発点と位置付けられた。

 連邦政府を代表して調印を行ったアベッツ上院議員は「今回の協定締結は、遠隔地や地方との調整、また、環境管理、農業開発など、豪州の専門知識を十分に発揮できる機会だ」と述べ、この協定締結が両国にとって互いにメリットがあることを強調した。また同議員は、この4年間の中で、特に、土壌管理と酪農に対する技術協力が、優先的な課題となることを示唆した。

 酪農部門に関する豪州側の対応としては、すでに2006年3月、連邦政府が国内の乳業メーカー各社の技術担当者を中国に派遣し、中国の乳業メーカーとより密接な関係を確立するため、現地乳業メーカーや酪農家などに対する技術指導を行っている。


豪州サイドは、協定を通じ農産物の輸出拡大を期待

 今回の協定締結の背景には、豪州側の立場として、現在、第3位の農産物輸出先である中国に対する技術協力を足掛かりに、両国間の関係をより緊密なものとすることで、農産物輸出のさらなる拡大につなげたいとの思惑がある。さらに、今後の中国とのFTA交渉に向けて、今回の技術協力がその第一歩になるとの期待もある。一方、中国側にとっては、豪州の農業技術を導入することで、都市部との収入格差が著しい農村部の振興を図り、生産性を向上することで食料需給の安定化につなげたいとの意向がみられる。

 豪州から中国への農業(食物および繊維)製品輸出額は、2004年に総額25億豪ドル(2,200億円)に達しており、これは10年前に比べて3倍の伸びとなっている。また、豪州連邦政府が4月3日に発表した直近の貿易統計によると、今年2月の中国への輸出額(農産物を含む)は、前年同月比46%と大幅に増加し、引き続き好調さを維持している。


◎ 中国首脳、豪州とのFTA締結の早期実現に意欲

 豪州を訪問中の中国の温家宝首相は4月3日、連邦政府のハワード首相との首脳会談後の記者会見で両国のFTAについて触れ、「今後、1、2年でFTAをスタートさせるため、両国は互いに努力すべきである」と述べ、少なくとも2年以内に締結すべきとの意欲を示した。両国のFTAは、昨年4月に同首相が中国を訪問した際に交渉を開始することで合意した。交渉に先立ち両国政府の研究会報告では、2005年からの10年間で、それぞれの国内総生産(GDP)について豪州が180億米ドル(2兆700億円:1米ドル=115円)、中国が640億米ドル(7兆3,600億円)押し上げるとしている。

 また、豪州連邦政府のベール副首相兼貿易相は4月3日、中国とのFTAについて、両国は基本的にすべての品目に対しての協定締結に向けた動きに合意したことを発表した。会見で同氏は「FTA交渉は、両国にとって非常に難しいものとなるが、最終的な結果がどちらに転んでもお互いが勝者でなければならない」とし、また「難しい交渉であるが、中国の巨大な市場に対して、豪州の輸出業者や投資家が参入できる機会を提供したい」と述べ、今後の交渉に向けた意気込みを語った。


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