豚産業の中で重要度を増す新規加盟国(NMS)


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● EU25カ国の中で存在感を示すポーランド ● ● ●

 ポーランドは、2005年4月にEUに新規加盟した10カ国(NMS)の中でも養豚産業の規模が突出して大きく、EU拡大後の25カ国の中で見てもドイツ、スペインに次ぐ域内で第三位の主要な豚飼養国である。また、豚の生産頭数においてもドイツ、スペイン、フランス、デンマークに次ぐ大きさを持ち、EUの豚肉需給を考える上で重要な国の一つとなっている。

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2006年のポーランドの豚肉生産量は、近年の豚飼養頭数の増加を追い風として前年比9.1%増の214万トンとかなりの程度増加すると予測されている。また、同年の一人当たりの豚肉消費量は、豚肉価格の下落が進むことなどから前年比7.7%増の42キログラムに増加するとされる。なお、海外で増大する豚肉需要を受けて豚肉輸出量も大きく増加しており、2005年の19万3千トン(前年比3.8%増)から2006年は同50.3%増の29万トンへ大幅に増加すると予測されている。

ポーランドの豚肉需給の推移

資料:ZMP

ポーランドの豚飼養頭数(12月時点)

資料:デンマーク豚肉機構連合


● ● ● 今後ますますNMSの豚産業への投資が拡大 ● ● ●

 欧州委員会が2006年2月に公表した2012年までの豚肉需給の中期見通しによると、2004年における一人当たりの豚肉消費量は、EU15カ国が42.9キログラムであるのに対しNMSは46.0キログラムと既に前者を上回っており、同委員会は、将来的にNMSとEU15カ国の格差はさらに拡大すると予測している。こうした大きな豚肉消費の構造などを背景として、NMSに対し、EU15カ国をはじめとする先進国から養豚産業の規模拡大への投資が今後進む可能性が大きいとみられている。

 なお、2005年におけるEU25カ国の豚生産頭数に占めるNMSの割合は、15%強に達している。ハンガリーやチェコなどの豚産業の構図もポーランドに近いとされており、これらの市場規模も拡大していくとみられることから、この割合は今後上昇して行く可能性が高い。


● ● ● デンマークからの肥育豚出荷先として重要度を増す ● ● ●

 EU最大の豚肉輸出国であるデンマークでは、厳しさを増す環境規制やコスト増大を回避する目的でポーランドへ25キログラム程度の生体豚を輸出し、ポーランド国内で肥育・と畜加工を行った上で加工品をドイツなどへ輸出する動きを加速していると言われる。既にデンマークの大手企業などからの投資が進んでいるが、ポーランドの養豚農家やパッカーは小規模のものが中心であるため、それらの集約化が課題とされている。


● ● ● 日本や中国への輸出も視野に ● ● ●

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)によると、ポーランドは現在、豚肉の輸出先の多様化を図るため、対日輸出用の加工場の選定準備などを進めているとされている。同国の有力なパッカーの幾つかは2006年4月にも対日輸出を始めたいとしており、輸出のための条件が整えば2006年には5万トンの対日輸出が可能としている。また、同国は既に韓国への輸出を開始しているほか、将来的には中国への輸出も視野に入れたいとしている。


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