AI対策には2億5千万ドルが必要
インドネシア政府は8月下旬、2007年における鳥インフルエンザ(AI)対策予算案について、前年並みの約5千4百万ドル(約63億2千万円、1ドル=117円)とすることを表明した。
2007年の同予算案については、当初、歳入不足から約4千6百万ドル(約53億8千万円)に減額する予定であったが、同国政府のAI対策に対する姿勢への国際社会や援助機関などからの批判に配慮した結果、前年並みになったとされる。同国政府は、AI撲滅に要する費用について、年間約2億5千万ドル(約292億5千万円)が必要であると試算しているものの、このうち5千万ドル(58億5千万円)程度の負担能力しかないとしており、資金および技術面での国際援助を求めている。
同国に対する支援策として、世界銀行は9月17日、1千5百万ドル(約17億6千万円)の資金供与を行う旨発表した。また、世界銀行は同時に、AIが全世界に拡大した場合、最悪のケースとして世界経済に及ぼす被害総額が最高で2兆ドル(約234兆円)、死亡率を1%と想定すると7千万人の死者が発生する可能性があるとの試算を表明した。
AI対策の現状
同国政府によれば、9月現在、同国内33州のうち29州でAIの発生が確認されているとしている。同国政府は、AI対策が遅れているとの批判に対しては、既に2千9百万羽に及ぶ家きんの殺処分の実績や今後のワクチン接種計画などを挙げて反論している。
同国におけるAI対策の障害として、家きん殺処分に係る補償額が少ないことなどが指摘されているほか(「海外駐在員情報」734号参照)、大小の島々から構成されているため広大な領域を有することや多民族国家で多数の言語が使用されていることなども、AIに対する知識などを普及する際の阻害要因とされている。
また、国や州などの家畜衛生担当者が、AI感染に係る立ち入り検査を実施する際に、農民の強い抵抗により検査の円滑な実施が阻害されるケースが多発していることから、今後、同国政府は、検査を阻害する場合には、警察や軍の導入も辞さないとの姿勢を打ち出している。
さらに、同国政府は、今後のAI対策として、約6千万羽の家きんに対するワクチン接種を今年の12月までに行うことを表明した。当該対策に用いられるワクチンは、既に中国から3千1百万ドースを輸入済であり、今後、6千ドースが追加輸入されるとしている。
同国のAI対策は、ほかの東南アジア諸国が殺処分を中心にした対策を推進しているのに対し、2004年1月にAI発生が公表されて以来、殺処分とワクチン接種を併用する対応が続いている。今回のワクチン接種に当たっては、ワクチン接種の是非や使用されるワクチンがH5N2型であるとされることから、同国内の保健担当者などの間でも対策の有効性に懸念の声が出ている。なお、世界保健機構(WHO)は、家きんなどに対するワクチン接種よりはAI発生個所における一斉殺処分を推奨している。
増え続ける人への感染
同国におけるAI感染者数については、WHOによれば10月3日現在、2003年からの累計で感染者が69名、うち死亡者は52名となっており、死亡者数は世界全体の3割強を占めている。なお、8月下旬にAI感染に係る定義が変更されたため、同国における昨年の感染者数および死亡者数にそれぞれ2名ずつ追加された。
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