米国農務省、干ばつ対策で7億8千万ドルの財政支援を決定


 米国農務省(USDA)のジョハンズ農務長官は8月29日、干ばつなどの天候災害により生産危機に直面している農業者および牧畜業者に対し7億8千万ドル(928億円:1ドル=119円)の経済支援を行うことを公表した。このうち、畜産分野については、干ばつ被害を受けた生産者に、5千万ドル(60億円)規模の新たな財政措置を伴う支援策を講じるとしている。

 干ばつ被害については、中西部から平原地域にかけてここ数年来の大きな問題となっており、11月の米国議会中間選挙を前に生産者団体が対策を求めて議員への働きかけを強めるなど、政治的な動きが活発化していた。


畜産分野への直接支援は5千万ドル

 畜産分野への支援策は家畜補助助成事業と呼ばれ、5千万ドルの財政支出を伴う新規事業である。5千万ドルの助成金は定額交付金として各州に配分され、各州から本年3月7日から8月31日までに干ばつ調査でD3またはD4(極度のまたは異常な干ばつ)と認定された郡の家畜生産者に支払われる。州別の助成金額は、認定を受けた郡における肉用牛および羊の成畜飼養頭数に応じて案分されることになっている。

 個々の生産者への支払い額は干ばつによる被害額の範囲内とされているが、対象メニューには飼料生産の減少に伴う購入飼料に要する経費、家畜を新たな放牧地に移すための係増し経費、緊急の給水確保に要する経費などが含まれており、生産者にとって使いやすい事業となっている。

 なお、農務省農業サービス局(USDA/FSA)によると、この支援措置は2006年の干ばつにより飼料生産に被害のあった特定の州に対して行われるものであり、生産者の購買力回復を目的とする基金への助成を定めた1935年農業法第32条を根拠法令としている。

耕種部門への支援は不足払いの前倒し支払いなど

 畜産分野以外への支援策は、一つが環境保全基金の未使用分3千万ドル(36億円)を干ばつ被害を受けた地域の対策に振り向けるものである。このうち、1.9千万ドル(23億円)は被害農地の復旧支援事業である緊急農地保全計画に、1.1千万ドル(13億円)は放牧助成により草地の農地転用を防ぐ事業である草地保全計画に使用される。

 また、もう一つの支援策は、2005作物年度(9月〜翌年8月)における綿花、ソルガムおよび落花生の価格変動対応型支払い(2002年農業法で復活した実質的な不足払い)の即時実施であり、これにより7億ドル(833億円)が前倒しで支払われることになる。

干ばつ対策をめぐる生産者団体と議会の動き

 干ばつ問題については、かねてより全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)などの生産者団体が対策の必要性を訴えてきていたが、8月上旬にはベン・ネルソン上院議員をはじめとする15名の上院議員がヘンリー・ポールソン財務長官に対し書簡を発出し、天災に関係する家畜販売についての所得税猶予措置を定めた2003年米国雇用創出法の適用を延長するよう求めるなど、11月の中間選挙を前に政治的な動きが活発化していた。


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