肉牛価格の一段高を見越した出荷抑制により生産量は減少


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 生産量は前年度比4%減の207万7千トン ● ● ●

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は8月、豪州統計局(ABS)の統計に基づく2005/06年度(7〜6月)の牛肉生産量を発表した。これによると、牛肉生産量(枝肉ベース、子牛肉を含む)は207万7千トンとなり、前年度の生産量が記録的であったことから、これを4%下回る結果となった。

 また、肉牛と畜頭数(子牛を含む)は、前年度比5%減の840万1千頭であった。その内訳を見ると、成牛雄は、前年度比3%減の423万9千頭であったのに対し、成牛雌は、前年度比7%減の334万2千頭と大きく減少した。

 一方、1頭当たりの平均枝肉重量は270キログラムに達し、これは2002/03年度と比べて7%増、重量で19キログラムの増加になっている。この要因の一つとして、輸出需要などを背景に肉牛価格が高水準で推移したことで、肉牛農家などで肥育期間を延長する動きがあったことが挙げられる。

牛肉生産量と若齢牛価格(EYCI)

資料:ABS、MLA

● ● ● 高い輸出需要を背景に生産者は出荷抑制へと動く ● ● ●

 肉牛と畜頭数の減少要因としてMLAは、(1)東部主要生産州での乾燥気象と水不足により牧草の生育状況が悪化したにもかかわらず、肉牛価格の指標となる東部地区若齢牛指標価格(EYCI)が2005年8月には過去最高水準となるキログラム当たり416豪セント(379円:1豪ドル=91円)に達したように、アジアでの米国産牛肉の輸入停止問題を背景とした豪州産牛肉の輸出需要が、肉牛生産者に肉牛相場の一段高を抱かせたことから、出荷抑制へと動いたこと、(2)アジア諸国での米国産牛肉の輸入停止により豪州産牛肉に対する需要が大幅に伸びたことで、前年度(2004/05年度)のと畜頭数が増加し過ぎたこと、(3)2002/03年度の大規模な干ばつ以降、肉牛の飼養頭数が回復していないことから、畜産農家による牛群の再構築で、雌牛を中心にと畜に回る頭数が少なくなっていること、などを挙げている。

● ● ● 牛肉生産州クイーンズランドだけは増加● ● ●

 2005/06年度の牛肉生産について州別の生産量を見ると、各州が軒並み減少する中で、牛肉生産の主産地であるクイーンズランド(QLD)州は、前年度比1%増の105万7千トンと記録的な水準となった。QLD州での肉牛と畜頭数は前年度比1%減であったものの、枝肉重量が同2%増の289キログラムであったことが生産量を押し上げる大きな要因となった。これは、QLD州でのフィードロットにおける肉牛生産が増加したことによる。

 豪州フィードロット協会(ALFA)との共同調査による全国フィードロット飼養頭数調査結果によると、2006年6月末のフィードロット飼養頭数は、前年同期比で7%増となり、飼養頭数の記録を更新している。その中にあって、飼養頭数全体の5割以上を占めるQLD州は同16%増と、頭数拡大のけん引役になっている。

 6月末までの1年間にフィードロットから出荷された頭数は、前年同期をさらに5%上回る259万頭に達し記録を更新しており、豪州国内でと畜した成牛の実に34%がフィードロット由来である。


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