シンガポールの畜産事情



ひとくちMemo

 シンガポールは、東京23区よりやや広い面積(699平方キロメートル)に、約424万人が居住する都市国家である。

  同国内の農地面積は、国土の約1%程度とわずかであり、国内で消 費される食料については、その9割以上を外国からの輸入に依存しているのが現状である。農業分野がGDPに占める率も0.1%程度であり、農産物の輸出についても再輸出の形態が主流である。

  また、限られた国土において最大限の生産性を上げるべく、農場の近代化や集約化、規模拡大などを主な目的としたアグロテクノロジープログラムを1986年から開始し、島内6カ所に農業生産団地を設けている。2006年5月現在、国内の農場数は233カ所で、畜産関係が26カ所、養殖魚関係が76カ所、園芸関係が131カ所、総面積は701ヘクタールとなっている。また、一部の農場は教育や観光を目的とした一般公開を行っている。

  今回は、シンガポール内の農場の様子および加工処理施設などについて紹介する。


同農業生産団地内にある鶏卵農場。鶏卵農場は防疫上の理由から立入が禁止されており、観光客などへの一般公開も実施していない。国内における鶏卵消費量は1日当たり約300万個。うち200万個はマレーシアから輸入されており、残りの100万個は国内で生産される。鶏卵農場は国内に5カ所あり、同農場における鶏卵生産量は1日当たり約15万個。なお、シンガポールでは国土の約9割が国有地となっており、民間が利用する場合、借地権のみが売買される。農場は入札による20年の賃貸契約が多い。

 

島内北西部、マレーシアとの国境付近のリムチューカンロード沿いに立地する農業生産団地。同地域は農業生産団地のほか、墓地、産業廃棄物処分場などがあり、軍の演習地もある。周辺に人家は全くない。農業生産団地内は畜産関係のほか、園芸農場、野菜農場、鯉などの養殖場が多数あり、整然と区画されている



農業生産団地内にある国内1軒のみのヤギ農場。飼養頭数は約1千頭、ヤギ乳の生産量は約300リットル。酪農場と同様に放牧は行っておらず、飼料は豪州から全量輸入している。
土地の賃貸契約はあと5年となっており、現在のところ規模拡大の予定はないとのこと。


ヤギのミルクは、農場販売と直販のみ、保冷車は5台有。250ミリリットル1本当たり2シンガポールドル(147円、1シンガポールドル=73.5円)コーヒー味は2.5シンガポールドル(184円)。






搾乳作業の見学が可能で、毎日多数の見学者が訪れる。最寄りの地下鉄駅から農場訪問者のためのシャトルバスが運行されており、同農場はバスルートに組み込まれている。



酪農場は国内に3カ所、北西部の農業生産団地内に3農場とも隣接して配置されている。3農場の合計面積は約7ヘクタールで、酪農場を経営しているのは、いずれもインド系シンガポール人である。
環境問題により放牧は行わずすべて舎飼いとなっている。最大の酪農場の飼養頭数は約300頭。

 

 

豚の運搬船。豚肉は豪州、中国などから冷凍・冷蔵品が輸入されるほか、隣国インドネシアの国境の州から専用船による生体輸入が行われている。
養豚およびブロイラーは、同国内で飼養が禁止されており、農場は存在しない。

 

生体で輸入された豚は、島内南西部ジュロンにあると場で処理される。


大手鶏肉加工施設、島内北西部の工業団地内に立地している。
鶏肉は、ブラジル、米国などからの冷凍品のほか、マレーシアからの生体輸入も行われており、当施設には1日当たり約2万羽が到着する。年間の処理羽数は約530万羽。



加工処理された鶏肉は、国内のホテル、スーパーマーケット、フードコートなどに納入されている。

シンガポール駐在員事務所 林  義隆、斎藤 孝宏


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