特別レポート

アルゼンチンの水牛生産の概要

ブエノスアイレス駐在員事務所 横打 友恵、松本 隆志

1.はじめに

 水牛と言えばインドをはじめとしたアジア諸国での飼養風景が思い浮かぶだろう。しかし、水牛の肉と乳製品の生産は、アルゼンチンの広範な地域においても、畜産業を営む上で一つの選択肢となりつつある。現在、水牛の生産はその肉および乳製品が比較的好評なため、この地での伝統的な肉用牛生産ではない、新たな畜産物生産の一つとして、一部の生産者によって実施されている。しかし、その潜在力は、他の畜産に適しない土地の今後における有望な産業として期待されている。

 そこで、今回はアルゼンチンの新しい動きとしての水牛生産について報告する。

2.水牛飼養の一般概況

(1) 世界における飼養動向

 国際食糧農業機関(FAO)によると、2005年における世界の水牛の推定飼養頭数は1億8千万頭を超える。その93%に当たる1億7千万頭がアジアで飼養されており、次いで南北アメリカの1千万頭、アフリカの390万頭が続いている。1995年から2005年の10年間で、1,200万頭が増加しており、これは7.0%の増加率に相当する。この間、水牛の肉と乳製品の生産の目覚ましい増加およびその特徴と栄養価についての知識の普及により、水牛製品に対するイメージも変わりつつあるといえる。水牛製品は開発途上国において重要な栄養源として認知されており、さらに有望なビジネスの機会を作りつつある。

図1:世界の水牛飼養頭数の推移 

 

(2)南米およびアルゼンチンにおける飼養動向

 南米における水牛飼養頭数については、アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)によると約380万頭となっている。そのうちの350万頭がブラジルにおり、主に北部のアマゾン地域とリオグランデドスル地域で飼養されている。

 アルゼンチンにおいては、20世紀初頭にブラジル、イタリアおよびルーマニアからサンタフェ、ラパンパ、ブエノスアイレスの各州への導入から始まった。このときは抗病性、粗食に耐えるなどの能力を獲得するため、牛との交配が目的だったが、この試みは失敗に終わり、これらの水牛は野生化することとなった。水牛飼養が再び開始されたのは、1970年代に入ってからでイタリア、ブラジルおよびルーマニアからコリエンテス州に導入され、1976年にはわずか1,300頭であった頭数は、2005年現在、南米大陸の中でブラジル、ベネズエラに次いで3番目の8万頭となっている。

 当機構ブエノスアイレス駐在員事務所の調査では、水牛の飼養頭数は1年当たり平均13.5%の割合で増加しており、繁殖雌水牛の分娩率75%、平均供用年数18〜20年から推計すると2015〜18年には全国の水牛飼養頭数は150万頭に達すると推計される。

 アルゼンチン水牛生産者協会(AACB)によると、世界にはおよそ19品種の水牛が存在するが、アルゼンチンにおいては、地中海種が全体の7割を占め、その他ムラー種とジャファラバディ種の3品種が、ブエノスアイレス州北部からパラグアイ国境まで分布する。主としてコリエンテス州、フォルモサ州、チャコ州の浸水する地域に集中し、これら3州で全体の9割の水牛が飼養されている。

アルゼンチンの主要水牛生産州




アルゼンチンの水牛飼養頭数の推移
 
州別飼育頭数(2005年)
 

 なお、それぞれの品種の主な特徴は次のとおりである。

 ・地中海種



 イタリアとブラジルで多く飼養されている。体色は黒。角は三日月形を形成し、後方に向かって生えている。雄の成牛は600〜800キログラム、雌は600キログラム。乳用と肉用の二つの用途に利用されるが、特に乳用としての能力に優れている。初産月齢は平均40カ月。

  ・ムラー種



 体色は黒。角は短く、後上方に反転し、内側にらせん状(ムラー)に曲がっている。出生時の平均体重は38キログラム、雄の成牛は600〜900キログラム。雌の成牛は550〜600キログラム。地中海種と同様に乳用と肉用に利用される。

  ・ジャファラバディ種



 品種名は原産地であるインドの町の名に由来している。体色は黒。角は大きく重く、下方へ傾斜し、先端は後方へカールしている。雄の成牛は700〜1,500キログラム、雌は650〜900キログラム。アルゼンチンでの飼養頭数はわずかだが、ブラジルでは肉用として広く飼養されている。(写真提供:AACB)

 アルゼンチン北部は、高温高湿の気候で、浸水し易いため、栄養収量の高い牧草の生育は困難である。これらの条件は牛の飼養には不利であるが、洪水で飼料が欠乏する場合でも、水に没したり水面に浮いている草を食料とするなど、粗食に耐え、寄生虫や疾病への耐性も高い水牛は飼養することができる。そのため、90年代に肉牛生産を補完する意味で、この地で数人の生産者が肉用水牛の飼養を開始した。この背景には、農業技術の発展による肉牛生産から穀物生産への転換といった事情がある。

 SAGPyAによると、耕種農業は品種改良や農業機械の近代化により、これまで放牧地として畜産に使用されてきた土地への拡大を続ける一方、畜産にしか利用できないものの、今後利用可能な土地が多く存在しているとし、全体では畜産として利用可能な土地の50%しか活用されていないとしている。このため、これまで利用されなかった土地を活用して、肉用水牛の飼養頭数を増やす取り組みが提起・実行されつつある。

 なお、政府の取り組み以前に民間レベルでは、1983年に水牛の生産振興を図る目的でAACBが設立されている。現在AACBでは、飼養技術や情報の提供、消費者への啓発、調査や国内外の会議を開催するなどの活動を行っている。


3.水牛産業振興に向けた動き

(1) 第1期(94〜2005年)

 SAGPyAおよびAACBの共同作業により、水牛の優秀性を普及し、伝統的な肉用牛生産に替わる選抜肢として関係者の関心を高めるため、水牛飼養の振興対策が実施された。最初の具体策は、95年の「水牛肉テスト」と題したビデオの出版であった。この中でアルゼンチンにおける水牛飼養の経過が報告されている。次いでSAGPyAのホームページで定期的に水牛に関する情報を掲載するなどの広報活動も開始された。

 また、水牛部門における国内および国際的な販売、飼養に関する部門別分析を実施するため、SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威から評価する手法)が行われ、これにより第1期が終了する。

(2) 第2期(2005年〜)

 SAGPyA決議第589/2005号により、水牛フォーラムが創設された。同フォーラムは生産、販売および加工チェーンを確立するために各部門の必要性に応じた生産展開推進を目的に、将来的にアルゼンチンにおいて持続的な生産、販売および加工を可能とする能力を育成するためにこの分野を強化することを目指している。

 このフォーラムでの活動は生産段階を中心としており、飼養頭数の確保のための繁殖雌水牛の導入・保留、優良な遺伝資源の購入など、生産者の技術向上を振興し、同フォーラムでの決定事項を機能的に調整し、環境を整備することを最重要課題としている。

 なお、SAGPyAでは2005年12月、「水牛飼養マニュアル」を策定し、新たに水牛を導入しようとする生産者への最初の支援としてこれを無償で提供している。


4 肉用水牛の生産動向

(1)肉用水牛の飼養

 AACBによると、国内にはおよそ60戸の繁殖・肥育を行う生産者がおり、飼養頭数が1万頭以上の経営はチャコ州とフォルモサ州の各1戸のみで、半数の30戸が100頭未満となっている。

 水牛の生産サイクル

 アルゼンチン北部コリエンテス州の事例を見ると、4〜7月の間、放牧地内の繁殖雌水牛群の2〜3%に当たる種雄水牛を放し自然交配で受胎させる。2〜5月の間に分娩が行われ、牧草の生産性の影響にもよるが分娩率は平均で75%程度となっている。子水牛は6〜8カ月で離乳する。この間、子水牛は1日当たり平均700グラム増体するが、1頭当たり1ヘクタールの牧草地を必要とし、離乳時の体重は240〜250キログラムとなる。離乳後、雌は保留し、雄はすべて去勢後肥育向けまたはと畜向けに販売される。肥育向けはコリエンテス州とミシオネス州の農家で24〜32カ月齢まで肥育され、500〜550キログラムに仕上げられる。繁殖雌水牛の供用期間は18〜20年と長い。また、肉用水牛は実需者との相対で取引されるが、最後に生まれた雌については、競りに出され、この地域での水牛の振興を図るための一種のサービスともなっている。なお、この農場では実験的に100頭の雌に対し、ブラジルからの輸入精液により人工授精を行っている。

 水牛の生産については、繁殖は牧草生産力は低いが広い土地が確保できる北部、肥育は消費地に近い南部というアルゼンチンにおける肉牛生産とほぼ同様の図式が確立されているといえる。

 

コリエンテス州の繁殖農家(Rincon del Madregon)。農場面積は1万4千ヘクタールあり、そのうち7割強の土地が川岸あるいは湿地となっている。飼養頭数は約1千頭、電気牧柵で牛群を管理し、農場内の管理用に離乳時に耳標を装着する。農場主はコリエンテス州を中心に構成された水牛生産者団体の一つ、アルゼンチン水牛振興協会(ABUAR)の代表でもある。

(2)と畜

 水牛のと畜については、他の食用の動物とともに農畜産品衛生事業団(SENASA)決議第13/2003号により、承認を受けた食肉処理工場で行うことが定められている。アルゼンチンにおける水牛の年間と畜頭数は推定で8千頭程度のため、SENASAの認可を得て水牛を処理・加工しているパッカーは数社にすぎない。

 今回の事例に挙げたLa Filiberta農場は、と畜施設を持たないため、他社にと畜を委託し、食肉販売を行っている。 同農場は、ブエノスアイレス州とエントレリオス州の境にあるパラナ川近郊の水牛生産者で組織するパラナ・デルタ地域水牛生産者組合(Productores de Bufalos del Delta del Parana)の中心的存在である。同組合は10名の生産者で構成され、組合全体で約4千頭の水牛を飼養している。2001年から水牛生産を開始し、2003年からと畜を実施し、2006年1〜6月現在で300頭をと畜しており、年間では600頭の出荷を予定している。現在、ブエノスアイレス市郊外の食肉パッカーEcocarnes社にと畜を委託している。と畜はSENASA規則により、牛、水牛の順で行われる。なお、水牛はおよそトラック1台分の頭数が集まった段階で出荷されるため、と畜の実施は不定期となる。訪問当日は、22〜24カ月齢の500キログラムの雄のみ32頭(ムラー種27頭、地中海種5頭)が搬入された。 

 La Filiberta農場の代表、Armando Cadopi氏は自身の経営について、「水牛の飼養頭数を増やすために雌は繁殖用に保留している。また、冬から春の間は草がないため、と畜は行わない。牛のように穀物肥育をしようとは考えていない。牛に比べ脂肪が少ない=コレステロールが少ないということが水牛肉の商品価値といえるため、仕上げにトウモロコシを与え、脂肪を付けるようなことはしない」と語った。

 年齢を経た繁殖用の水牛の角は、ナイフの柄として利用されるなど有益であるため、と畜・放血後、はさみのような機械で切断・回収される場合もある。若い肥育用の水牛の角は柔らかく、中がスポンジ状なので使い道はない。

 La Filiberta農場における水牛肉の出荷先は、レストランが50%(そのうち35%がブエノスアイレス市内のレストランへ直売され、残りは、卸売業者に販売し、エントレリオス州内のバーベキュー店に向けられる)、サラミなどの加工品が50%となっている。

 聞き取りによると、水牛の生体価格は経産牛とほぼ同程度の生体1キログラム当たり1.60ペソ(61円:1ペソ=38円)。1頭の平均価格は千ペソ(3万8千円)前後とのことであった。




(表面脂肪の色が牛(右の写真)と比較して白いのが特徴)

アルゼンチンの水牛の歩留まり構成

資料:

資料:SAGPyA

参考:

去勢牛の生体重量は455.0キログラム、枝肉重量
は281.7キログラム、歩留まり61.9%


  水牛の歩留まりは50〜55%、主として皮、頭、足の重量とと体の消化器官内の内容物の比率が高いため、牛に比べると低い。しかし、同地域の去勢牛より短期間でかつ重量が多く仕上げられことにより歩留まりの低さを補完している。

(3) 水牛肉の消費

 (1)水牛肉は北部での消費が中心で、現地の精肉店では、牛肉と水牛肉が同じショーケースに並び同価格で販売され、消費者は特に選別をして購入していない。しかし、2003年6月のSENASA決議第228/2003号により、牛肉と水牛肉を識別し、価格差による不正行為の可能性を排除するため、枝肉に水牛肉と表示することが義務付けられた。また、これまで水牛肉は牛肉より品質が劣ると考えられていたが、水牛肉の持つ栄養価に着目した生産者らの努力もあり、高級レストランなどで水牛肉の料理が提供されるようになり、この先入観は次第に薄れてきたと言われる。水牛肉は脂肪とコレステロールが少なく、フィードロット肥育の輸出向け牛肉と同様な柔らかさを持っているといわれ、近年は差別的価格がある程度正当化されている。ブエノスアイレス市内のアサードレストランのように、牛肉よりおよそ3割高で供されている例もある。

 さらに、水牛肉のサラミやブレサオラ(生ハムタイプの塩漬け肉)は、いくつかの高級デリカテッセンで販売されている。

精肉100g当たりの栄養価の比較

資料:USDA



(牛(左)および水牛(右)のサーロイン部分を用いたステーキ)

 現在、水牛肉のすべてがアルゼンチン国内市場に供給され、輸出の実績は無いものの、前述のパラナ・デルタ地域生産者組合がドイツ向けにサンプル送付の準備をするなど、今後の輸出実現に向けて前進している。


5 乳用水牛の生産動向

 (1)乳用水牛の飼養

 水牛の生乳生産が開始されたのは1992年とその歴史は浅い。水牛生産の目的がインドやヨーロッパでは乳用であるのに対し、アルゼンチンあるいは南米においての第一の目的は肉用であり、乳用は二義的な色合いが強い。ムラー種、地中海種およびその交雑種が乳用として利用されている。酪農経営はブエノスアイレス、サンタフェ、トゥクマン、コリエンテス、フォルモサおよびミシオネス州に点在しており、これらの経営では、生産と加工を一貫して行っており、モツァレラを主とした自家製チーズを製造している。1日当たりの搾乳量は5〜6リットル、搾乳期間は年間240日で、1,200〜1,440リットルの生乳が生産される。  

 水牛乳を使用した乳製品としては、フレッシュチーズおよびクリオージョチーズ(軟質チーズ)、バター、リコッタ、ヨーグルト、モツァレラ、プロボローネチーズ(硬質チーズ)などが挙げられる。

 

コリエンテス州のLa Guillermina農場でのケソデカンポ(硬質チーズ)の製造風景。経営者は97年、肉牛農場であった同農場を購入、水牛の飼養を開始した。現在水牛340頭を所有。1日1回18〜25頭の搾乳を行う。1回の1頭当たりの乳量は4リットルだが、うち2リットルを子牛に与えるため32〜35リットルが消費用となる。手搾りのため量は安定していない。製造したチーズは敷地内にあるカバーニャと呼ばれる宿泊施設の利用者への食事や、近隣の消費者への直接販売が中心となる。

 (2)乳製品の消費

 現段階では、これらの乳製品は大半が地産地消であるが、関係者は水牛の乳製品の市場が確立されれば、輸出の面でより重要な役割を果たすことができるだろうと期待している。水牛の生乳は水分が低いため、成分歩留まりが極めて高く、乳製品の製造に適している。下の表は水牛の生乳と牛の生乳の歩留まりを比較したものである。

生乳の栄養素の比較

製品1キログラムに必要な生乳量の比較

資料:SAGPyA

 乳用水牛の生乳の安定供給が確立することにより、モツァレラチーズやその他のチーズの供給が増大し、需要が伸びているチーズ部門に貢献するものと期待される。

 各企業はこれらの製品の自社ブランドの差別化を意図しており、新しい消費習慣として、あるいは伝統的製品の代替製品としてこれらに対する消費者の関心を取り込むことに努めている。

 乳製品の輸出については、後述するLa Salamandra社が現在、生産するモツァレラチーズのおよそ20%をチリに仕向けている。

 なお、ブエノスアイレス市内のスーパーでは水牛乳のモツァレラチーズは牛乳から作られるものに比べおよそ5割高の価格で販売されている。

 (3)La Salamandra農場の事例

 同農場は1996年から水牛の搾乳を開始した。農場面積100ヘクタール、そのうち飼料用トウモロコシが26ヘクタール、牧草地が50ヘクタールとなっている。

 1991年から水牛の繁殖を開始、飼養頭数は乳用水牛330頭、うち雌は140頭、搾乳牛は60〜90頭。飼料は80〜90%が牧草、10%がコーンサイレージで、サイレージは乳脂肪率を上げるために給与している。6〜9月の冬の間にイタリアからの輸入精液による人工授精を行っている。

 搾乳は1日2回、午前4時と午後4時に行い、8頭ずつ2列のヘリンボーンタイプのミルキングパーラーを使用している。搾乳中は1頭当たり1キログラムの濃厚飼料が給与され、パーラー内には水牛を落ち着かせるため、音楽が流れる。1頭1日当たりの平均乳量は8リットル、月平均15,000リットルの生乳が生産される。同農場の水牛の生乳生産量は98〜2003年には年平均12.2%の増加率を示し、2003年には20万リットルに達している。なお、繁殖雌水牛は15〜20年で更新される。

 今後は雌を保留して、飼養頭数を拡大することを目指し、2007年には400頭まで増やしたいとしている。また、同農場では、雄は年間50頭程度を離乳後に生体で販売する一方、乳用水牛を導入しようとする生産者に提供するために優秀な種雄牛を選抜し、国内で最良の乳用水牛の遺伝資源の作出に努めている。

 生乳は、パーラーに隣接する別経営で同名の乳業会社であるLa Salamandre社に出荷している。

 同社は、モツァレラチーズをはじめ、ドゥルセデレチェやアイスクリームを製造している。モツァレラチーズについては、さまざまな割合で牛乳を混ぜて生産しており、その割合は、水牛乳が60%から100%までに分かれ、水牛乳100%のモツァレラチーズは特別な注文でのみ製造されている。牛乳を混ぜ合わせるのは、保存性と凝固性を維持するためであり、この製法は製造メーカーとアルゼンチン規格認証機関(IRAM)の合意により認められている。

 なお、SAGPyAのレポートによると、水牛乳の生産における問題点としては、以下のことが挙げられている。

 ・水牛は季節性繁殖であることから、妊娠を逃した場合、翌年まで空胎となってしまう。

 ・輸入精液のコストがかかり、また、国内において優良な種雄牛が少ないため、近親交配が行われる。

 ・搾乳時に必要な従順性と飼養環境の変化に順応性の高い雌水牛の導入が困難

 ・需要が高く収益性の良いモツァレラチーズにとってカギとなる飼料の品質の向上

 ・モツァレラチーズの国内市場の開発不足と保存性の問題から遠隔目的地への輸出が困難


6 終わりに

 もともとはアルゼンチン北部の牧草地は生産性が低いなどの理由から、牛の飼養に適さないため、水牛が導入されたが、近年の健康志向と相まって、牛肉に比べ高たんぱく低脂肪である水牛肉は評価を高めているなど、水牛をめぐる状況は年々好転している。昨年より国立農牧取引管理事業団(ONNCA)の統計に水牛が牛とは別のカテゴリーとして掲載されるようになったことがその一例であろう。ただし、現在は雄か雌の区別だけで格付けできる段階にはない。しかし、水牛の肉が輸出向け牛肉と同様に評価され、また、現在は未だ肉用の生産に比重が置かれてはいるが、乳製品からの水牛産業を見ると、モツァレラチーズの世界的需要に後押しされたさらなる需要増が見込まれるものと期待される。

 アルゼンチンの水牛産業の振興の取り組みは始動して間もないが、世界に広がる有用な食肉、乳製品資源たる水牛の南米における今後の発展に注目したい。

 


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