欧州委員会は8月1日、サルモネラ菌削減に向けた二つの規則であるEU域内の家きんおよび卵でのサルモネラ保菌率を削減するための目標率を設定する規則と、同菌の削減のために利用する手段を制限する規則を適用したと公表した。
採卵鶏でのサルモネラ保菌率を削減する目標値を設定
一つ目の規則は、卵へのサルモネラ菌汚染を徐々に少なくするため、採卵鶏でのサルモネラ保菌率の削減目標率を設定するものである。この規則に規定された年間の最低限の削減率に基づき、全加盟国は、サルモネラ菌を保有する採卵鶏の羽数を削減する対策を講じなければならない。これは、現在、サルモネラ保菌率が高い加盟国ほど、厳しい目標設定となっている。目標値の達成期限は、2008年中と設定されている。
なお、各加盟国は、採卵鶏でのサルモネラ菌削減に向けた各加盟国の計画を、2007年1月末までに、欧州委員会に提出することとなっている。
規則に設定された加盟国の年間の削減目標率は、以下のとおり。
・前年のサルモネラ菌の保菌率が10%を下回っていた場合、前年の保菌率の10%
・同10〜19%の場合、前年の保菌率の20%
・同20〜39%の場合、前年の保菌率の30%
・同40%を超える場合、前年の保菌率の40%
また、加盟国での最終目標保菌率は、2%以下としている。
さらに、本規則では、採卵鶏でのサルモネラ菌のサンプリング検査のための条件も規定し、設定した目標率を確実に達成するため、この検査に基づく結果を報告することも規定している。
EUでは、すでに繁殖用のめんどりに関しても、採卵鶏と同様の目標値を設定している。今後、ブロイラー用のめんどり、七面鳥、豚においても、同様の目標値を導入するとしている。
EFSAがEUの大規模採卵鶏施設のサルモネラ保菌率を調査
この目標削減率の設定に当たっては、欧州食品安全機関(EFSA)が本年6月に公表した採卵鶏でのサルモネラ保菌率を調査した結果に基づいている。この調査は、2004年10月1日〜2005年9月30日までの間に、採卵鶏千羽以上を飼養するEU域内の施設5,317カ所を調査したものである。
これによると、全体の30.7%の大規模採卵鶏施設において、サルモネラ菌の保有が確認された。また、加盟国別に見ると、その保菌率は、最低0%から最高79.5%と非常に幅の広いものであった。
2010年以降、汚染群からの卵を流通禁止
欧州委員会は現在、加盟国とともに、サルモネラ菌を保有する群からの卵を、2010年以降、EU域内の食用卵としての流通を完全に禁止することを検討している。また、これらの卵を加工用に使用する場合も、殺菌処理を義務付けることについても併せて検討を行っている。このため、加盟国や生産者にとって、今後のサルモネラ保菌率の削減は、最大の関心事の一つとなっている。
サルモネラ保菌率が10%以上の加盟国にワクチン接種を義務化
二つ目の規則は、家きんでのサルモネラ菌の削減のために利用する手段を制限するもので、特にワクチン接種と抗菌物質の使用に関して規定している。
ワクチン接種については、サルモネラ保菌率10%以下を実現できていない加盟国に対し、2008年1月1日以降、疾病の拡大と卵への感染を減少させるため、採卵鶏へのワクチン接種を義務付けるものである。
一方、家畜でのサルモネラ菌のまん延を防止するために抗菌物質を使用することについては、「同物質耐性の発現や拡大などの公衆衛生リスクがあるため利用すべきではない」とするEFSAの意見に基づき、加盟国で実施するサルモネラ菌管理プログラムには抗菌物質を使用すべきではないとしている。
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