ブラジルで進む積極的な農業投資


政府は家族農業に支援

 ルーラ大統領は7月24日、注1家族農業経営に対し低利融資や技術導入を行うなどの注2優遇措置を設けた家族農業法(法律第11326号)の制定を発表した。大統領は「家族農業経営は、農畜産物の過半を生産しており、国民に安価な食料を提供する重要な担い手である。今後、さらなる技術導入を進めることにより、家族農業の近代化を進める」と述べている。

 ブラジル連邦政府の発表によると、家族農業経営による農業算出額はGDPの1割を占め、農村労働者の7割が家族農業経営に属し、部門別に見ると、豚肉の58%、生乳の54%、鶏肉および鶏卵の40%、大豆の32%は家族農業経営により生産されている。

 全国農業労働者連盟(CONTAG)のサントス会長は、「これまで家族農業経営に対する支援は無かったが、この法により約2,000万人の生産者が優遇される」と述べている。

 (注1:農地開発省によると、家族農業経営とはブラジル南部では15〜20 ヘクタール以下、ブラジル北部では100 ヘクタール以下の農地で農畜産物の生産を行う経営

 注2:優遇措置の具体的内容は、大統領令の中で定められる予定)

民間による農業投資

 ブラジルの金融機関は一定額を農業に関する融資に充てる義務があり、国内農業への投資が行われている。うち、最近の事例を紹介する。

 (1)高能力乳牛の導入

 ブラジル全国で展開するパルマラト社は、1年間で6億1,000万リットルの生乳を処理しているが、これは工場の処理能力の約半分を利用しているにすぎない。このため、傘下の酪農経営が、飼養する低能力乳牛3頭を1日15リットル搾乳できる乳牛1頭と入れ替える計画を進めている。同社が保証人となり、金融機関は高能力乳牛を購入するための資金を酪農経営に融資し、融資額は8,000万レアル(43億円、1レアル=53.4円)を計画している。

 (2)非遺伝子組み換え大豆の作付け

 リオグランデドスル州のソラエ社は、多くの食品会社から、非遺伝子組み換え大豆に由来する植物プロテインの提供を求められている。これまで同社は他州から非遺伝子組み換え大豆を購入していたが、輸送費が上昇しているため、州内の生産者に対し非遺伝子組み換え大豆の買取価格を8%引き上げることなどを提案している。

 (3)アルコール工場への投資

 サンパウロ製糖協会(UNICA)は、2013年までにブラジル全国において約90件のアルコール工場の新設または拡張のため約50億レアル(約2,670億円)が投資されるとの見通しを述べている。また注32010年にサトウキビ生産は、作付面積880万ヘクタール、収穫量5億5,000万トンに達すると見通している。

 (注3:国家食糧供給公社(CONAB)は、2006/07年のサトウキビ生産を作付面積615万ヘクタール、収穫量4億7,000万トンと見通している)

 ロドリゲス前農相は「今後の進展は経済分野の決定に依存する」と述べて職を辞したが、農畜産物価格の低迷の中にあっても、積極的な農業投資が進められているようである。


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