中国新農業5カ年計画、生乳生産は年率8%の増産目標


三農問題解決を社会の共通任務に位置付け

 中国農業部は8月3日、2006〜2010年を対象年とする農業・農村経済発展第11次5カ年計画(全国農業和農村経済発展第十一個五年規画:以下「11次農業計画」)を発表した。11次農業計画は全5章16節から成り、2005年10月の中国共産党第16期中央委員会第5回全体会議(五中全会)の決議に基づき、今年3月14日に第10期全国人民代表大会(全人代)第4回会議で承認された国民経済・社会発展第11次5カ年計画(いわゆる「十一・五」)を踏まえ、社会主義的新農村の建設などを柱として、今後5年間の農業・農村の発展目標や経済政策の方針など、広範かつ多岐にわたる内容について定められている。

 11次農業計画では、2001〜2005年を対象とした第10次5カ年計画において中国共産党および国務院(内閣に相当)が最重要課題としてきた三農問題(農業の振興、農村の経済成長、農民の所得増と負担減)について、社会主義新農村の建設と農業・農村経済の発展を推進するための中国社会全体の共通任務として、真剣に解決すべきものであると位置付けている。


食糧供給の確保、農民増収などを三大基本任務に

 今回発表された11次農業計画は、国民経済の発展と適切な経済状態の社会の構築、そして農業・農村経済の発展に資するため、以下の事項を「三大基本任務」と定め、その達成に向け努力する必要があるとしている。

 1 食糧ほか農産物の効率的な供給の確保

 食糧は国内基盤に立脚した生産によって自給するという基本方針を堅持し、着実に食糧の増産を図り、国家の食糧安全保障を確保する。そのために、国民経済の発展と生活水準の向上に合わせた農産物構成の最適化と生産の標準化を推進するとともに、農産物の生産性や品質、安全性などの向上に努め、数量・品質の両面から農産物の効率的な供給を保証する。

 2 農業収益の向上と農民の持続的な増収の確保

 食糧の生産性向上を図り、良質で特色のある高付加価値の農産物生産を積極的に推進するとともに、労働集約型および環境保全型の農産物生産や有機農業を拡大し、競争力のある農業を育成する。また、生産コストの低下と増収を期待できる品種・技術の普及に努め、特に農業の産業化と加工度の高い農産物生産に力点を置き、農業の総合的な収益を向上させる。

 さらに、農村部における第二次産業、第三次産業の発展により、就労機会の拡大と所得の増加を図り、農民が就労するための技術や能力を高め、都市部・農村部間の二極構造を改善し、農村部への労働力移転を促進するとともに、都市部における農民の就労と所得増加への道を開く。

 3 農村社会の調和のとれた発展の確保

 社会主義新農村の建設という目標に向かい、農業の近代化を加速し、絶えず農業の機械化や農村部の工業化・都市化のレベルを高める。また、農村経済の建設を全面的に推進するとともに、農村部の道路や電力、メタンガス、人や家畜の飲料水、漁港などのインフラ整備を急ぎ、農村部の環境整備を強化し、教育・衛生および文化事業の発展を促し、農村社会保障システムを構築して、農村社会の調和した発展を推進する。


食糧生産能力は5億トン、生乳生産量は5割増を目指す

 11次農業計画では、自然・資源条件、産業基盤、発展潜在能力に基づき、全国の農業地域を(1)優位開発区、(2)重点開発区、(3)適度開発区の3タイプに大別している。

 畜産業については、優位開発区とされた地域において、酪農業や肉用牛産業、肉用羊(中国でいう「羊」は綿羊およびヤギを含む)産業、養豚業などの産業帯の建設を推進し、引き続き畜産業の構造改革に努め、家きん生産の安定と酪農乳業の強力な発展を図り、優良品種の導入などに加え、集約化や産業化、専業化のレベルを上昇させ、畜産物の品質と市場競争力を高めることとされた。

 重点開発区とされた地域においては、南部の中山間地の草資源の開発利用によって草地畜産を強力に推進し、畜産物の生産能力を増強することとされた。

 また、適度開発区とされた地域においては、草原の保全と草地開発を強化し、禁牧・休牧および輪牧制度を効率的かつ積極的に活用するとともに、家畜・家きん群の構造の最適化や飼養方法の改善などにより資源の節約を図り、環境保全型の畜産業を発展させ、無公害・エコロジー・有機農法による畜産物生産を増強することとされた。

 一方、11次計画では、前期計画の最終年である2005年をベースに、11次農業計画の最終年である2010年における主要指標=発展目標が定められている。これによると、食糧作付面積は年平均0.18%減の1億3百万ヘクタール、食糧総合生産能力は5億トンとされ、この2つの目標については、必ず達成しなければならない拘束性の指標とされている。

 このほか、食肉生産量の目標については年平均1.6%増の8千4百万トン、家きん卵生産量については同0.82%増の3千万トン、生乳生産量(牛、水牛、山羊などの乳を含むと思われる)については、同8.0%増の4千2百万トンとされ、中でも生乳生産量に関しては、2005年の2千9百万トンに比べ約1.5倍の成長が期待されており、優位開発区において酪農乳業の強力な発展を図るとした中国政府の意気込みが感じられる。

第11次5カ年計画における農業・農村経済発展主要指標(抜粋)


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