ロシア、国際需給ひっ迫から小麦、大麦に輸出税を導入
─ウクライナ、パンなどの値上がりを抑えるため輸出制限─


◇絵でみる需給動向◇

ロシア:輸出税は、11月12日から来年の4月末までの間

 米国農務省(USDA)が10月16日に公表した国際農業情報(Gain report)によると、ロシア政府は、国際的に穀物相場が上昇していることや国内のインフレ圧力の高まりから、2007年11月12日から翌年の4月30日までの間、小麦、大麦の2品目について、関税同盟国と政策調整した後、輸出時に、小麦については、1トン当たり22ユーロを下回らない10%の従価税、大麦については、1トン当たり70ユーロを下回らない30%の従価税を課す(決議第660号、10月10日公布)。この背景として、12月には下院選挙、来年3月には大統領選挙を控えていることも挙げられている。

 決議によると、小麦輸出制限措置は、ロシア国内の穀物需給が一層タイトになれば、さらなる上乗せもあるとしている。

 USDAによると、ロシア政府が国内価格安定のため保有する小麦を主体とする150万トン程度の介入在庫(小麦(3級、4級)、大麦のみ)の一部が、今回の決議実施期間中に売り渡された場合には、政府の買入規格に合致する小麦の輸出は禁止されるとしていた。10月29〜31日には、介入在庫から6万トン程度の小麦(3級)の売り渡しが実施されたと報じられている。

 また、ロシア政府は、酪農製品の国際価格が高騰しているため、10月15日に酪農製品の輸入税を引下げる決議(第674号)を公布しており、同日から5〜15%の引下げ幅を適用している。市場関係者の話では、酪農製品の多くが、ウクライナ、ベラルーシなど旧ソビエト連邦諸国から無税で輸入されており、すでに国内商品価格に織り込み済みのため、輸入税の引下げによる国内価格の値下げ効果はあまり望めないとしているが、粉乳を還元する牛乳・乳製品の価格は、幾分安定するかもしれないとの見方である。


ウクライナ:11月1日から来年3月末までの間、輸出を制限

 USDAが10月2日に公表したGain reportによると、ウクライナ政府は、2007年11月1日から翌年の3月31日まで間、小麦、大麦、トウモロコシ、ライ麦の4品目について120万3千トンの輸出割当を措置する(9月26日付け命令第1179号、10月2日公布)。

 その理由として、世界全体の穀物相場の上昇によるウクライナ国内のパンなどの値上がりを抑えること、政府による穀物在庫水準を高めること、干ばつにより国内の穀物生産量が減少したこと−が挙げられている。なお、2007年7〜9月にわたり、わずかであるが同4品目は3千トンずつの数量割当を実施していた。

 USDAによると、このウクライナ政府の割当数量は、2007/08年度(7月〜翌年6月)に見込まれる同国の輸出可能数量の3割程度に相当すると見ている。


ロシアの小麦輸出量は、世界第3位

 USDAが10月に公表した世界の穀物市場と貿易(Grain:World Markets and Trade)によると、2007/08年度のロシアの小麦輸出量は、米国、カナダに次ぐ1,200万トン(世界全体小麦輸出量の11.4%)とされ、大麦の輸出国・地域では、ウクライナは世界第2位となる250万トン(同大麦輸出量の16.7%)、ロシアは世界第5位となる160万トン(同大麦輸出量の10.7%)の輸出が予測されている。

ウクライナの輸出割当率(2007/08年度)


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