低迷が続くEUの子豚・豚肉価格


◇絵でみる需給動向◇


9月の子豚価格平均は前年同月比で約30%低下

 欧州委員会によれば、EUの9月の子豚平均価格は1頭当たり30.03ユーロ(4,955円:1ユーロ=165円)となり、前年同月を28.7%、過去3年間の平均と比較しても22.4%低下している。これはEU25となった2004年以降で最も低い水準となっている。

EUの子豚平均価格の推移


養豚主要国で軒並み低下

 子豚価格の動向を加盟国別に見ると、域内で最大の生産国であるドイツは前年同月比32.8%減の1頭当たり35.12ユーロ(5,795円)、第2位のスペインが同48.3%減の同19.15ユーロ(3,160円)と大幅に下回っている。また、近年、ドイツ向けを中心に子豚の輸出が増加しているデンマーク、オランダでもそれぞれ同22.0%減、44.4%減と同様に子豚価格が急落している。

 この背景には、豚肉需要が伸び悩む中、ドイツ、スペイン、デンマークなど主要国における生産量は前年に比べ増加しており、この結果、9月のEU平均枝肉価格は前年同月比7.5%減とかなりの程度下回っている。さらに、飼料価格は9月時点で前年同月を35%も上回っているとされ、このような状況が肥育向け子豚の需要減退につながり子豚価格が大きく低下する要因となっている。

主要国における子豚価格の比較

EUの平均枝肉価格の推移


民間在庫補助を開始

 このような厳しい豚肉需給に対処するため、EUでは10月29日より豚肉の民間在庫補助を開始している。豚肉の民間在庫補助制度は、加盟国における豚枝肉の卸売価格が、基準価格(1トン当たり1,509.39ユーロ(24万9千円))の103%を下回り、かつこれが継続すると見込まれる場合に、豚枝肉や部分肉を一定期間(3〜5カ月)保管する者に対し助成を行う制度である。前回は2003年12月から2004年2月に94,325トンを対象に実施している。今回も、EU全体の生産量の約0.5%に当たる10万トンの実施を想定している。


豚肉の輸出補助金再開は見送り

 また、ユーロなどの欧州通貨は、対ドルや円で上昇を続けており、EU域外への豚肉輸出には逆風が続いている。加えて、ポーランドでは、ロシアによる豚肉の禁輸措置が2005年以降継続している。このような状況から、ポーランドを中心に民間在庫補助の実施と併せて、豚肉の輸出補助金再開についても要望が出されていたが、10月22日の農相理事会では見送られている。なお、2003年末からの民間在庫補助の実施の際には、この受付を途中で打ち切り、豚肉の輸出補助金の再開へと切り替えた経緯がある。


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