垂直統合の進展により生産効率の向上が図られるメキシコ豚肉産業


 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は10月1日、メキシコの2008年における豚肉の需給見通しを公表した。これによると、2008年の豚肉生産は、生産規模の拡大に伴う品質の向上や、2007年初頭以降下落基調となっている豚肉価格が需要を促進することから、2007年の水準をやや上回るものと見込まれている。2008年の豚肉需給予測は、以下の通り。

飼料価格高により小規模生産者は離脱、間接経費節減のため垂直統合が加速

 同国の豚肉産業は、近年、生産部門の垂直・水平統合が継続的に進展しており、生産効率の向上を後押ししている。

 2008年当初の豚飼養頭数は、一腹当たりの平均産子数の増加など、垂直統合による生産技術の向上により、前年同期をわずかに上回るものと見込まれている(前年同期比1.6%増の1,041万頭)。

 2007年に入り、大規模生産者による生産拡大の速度は、豚肉価格の低迷や、生産コストにおける物材費の上昇などによりいったん減速した。また、小規模で非効率な生産者の多くは、飼料穀物価格の高騰などにより、肉豚の出荷を進めた上で、市場からの撤退を余儀なくされている。一方、多くの農協系中規模生産者は、間接経費の節減を図るため、大手パッカーとの契約出荷を進めるなどの構造変化が起きている。

 このようなことから、2007年の豚肉生産量は、前年をわずかに下回るものと推計されるものの、2008年には、1頭当たりの枝肉重量の増加などにより、前年比5.0%増の125万トンと見込まれている。


軟調な価格が豚肉需要を後押し

 2007年の豚肉消費量は前年と同水準と、伸び悩むものと見られているが、本年に入り、豚肉価格は、牛肉価格に比べ下落基調で推移していることから、2008年の消費量はわずかに増加するものと見込まれている(前年比1.3%増の160万トン)。

 先述のとおり、同国では、生産部門の垂直・水平統合が進展する一方、地方には小規模生産者も多く存在する。地方の小規模施設で生産された豚肉製品は、品質の斉一性に難があり、これが、豚肉消費を減速させる要因ともされているが、これらの問題は、垂直統合の進展とともに改善されるものと見込まれている。

 一方、2007年初頭以降の豚肉価格の低迷要因は、2006年秋以降の穀物価格高により、肉豚の生産コストが増大し、生産者の早期出荷が加速したためとされている。2007年1〜7月までの豚肉卸売価格(メキシコシティ)はほぼ毎月、前年同月を3割以上下回って推移している。


豚肉輸入は国内生産の増加により減少見込み

 豚肉輸入は、国内需要の増加に伴い、2000年以降おおむね前年を上回ってきたが、2008年の輸入量は、国内生産の増加などにより、前年を6.5%下回るもの(43万トン)と見込まれている。主要輸入先は、輸入量全体の約9割を占める米国で、主にソーセージ原料となるくず肉が中心とされている。

 一方、豚肉輸出は、高級部位を主流とする日本向けを中心に、近年増加傾向で推移しており、2008年は前年を14.3%上回る8万トンと見込まれているが、生産量に占める割合は、6%程度となっている。

メキシコの豚肉等需給の推移


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