中国、乳業の持続的発展に向けた政策を公表


農業部長は事前に酪農・乳業発展の5重点項目を提唱

 中国国務院は9月29日、各省・自治区・直轄市政府および国務院各部・委員会・直属機関あてに「乳業の持続的かつ健全な発展促進に関する国務院の意見」(国務院関于促進乳業持続健康発展的意見:2007年9月27日付け国発〔2007〕31号。以下「乳業発展意見」)を公布した。

 これに先立つ9月20日、孫政才農業部長は、北京市の酪農・乳業の発展状況について調査するため、市内の複数の乳牛牧場および乳業工場を視察した。そして、同市農業部門との会談の際、孫農業部長は、持続的かつ健全な酪農・乳業発展の推進は、各級政府農業部門にとって重大かつ緊急な任務であると繰り返し強調するとともに、(1)優良な乳牛の繁殖育成システムの整備、(2)乳牛の飼養方式の改革、(3)生乳価格の合理的な決定方法の構築、(4)殺菌乳、UHT牛乳(日本で言うLL牛乳)および還元乳など液状乳の表示の厳格化、(5)業界団体の有効機能の発揮と業界の自律強化、情報交換の促進などに対する支援およびサービス強化の5点を重点項目として提唱した。

 国務院常務委員会はその前日(9月19日)、すでに酪農・乳業の発展促進に関する研究を終え、その指導思想、基本原則、主要任務および重点事項、政策的支援、政策措置の実施などを盛り込んだ案の検討に入っていた。

 78年から開始された改革開放以降、中国の酪農・乳業は急速な発展を遂げ、農業構造の最適化と農民の増収、乳業企業の加工能力の増強、国民の牛乳・乳製品の消費向上などに大きく貢献してきた(本誌海外編2007年3月号特別レポート「急速に発展する中国の酪農・乳業」参照)。しかし、国務院によると、飼料価格の高騰や乳価の下落、乳牛の改良および飼養技術水準の遅れなどから、2006年以降、酪農収益が低下し、一部の地域では乳牛犢(雌子牛)のと畜が相次いでいるとされる。


乳業発展意見を受け、農業部は7つの重点項目を発表

 国務院による乳業発展意見の通知を受け、張宝文農業部副部長は10月中旬、黒龍江省の省都ハルピンで開催された中国乳業協会の特別理事会の席上、農業部として取り組むべき7つの重点項目について明らかにした。張副部長は、乳業発展意見の意義は重大であり、農業部はすでに各地の畜産獣医主管部門に関連任務の確実な実行を指示し、具体的な実施案の制定に向け、関係部署とも積極的に協議を重ねているとした。農業部の発表した重点項目は、以下の通りである。

1 優良な乳牛に対する補助の拡充
  2008年も優良な乳牛の導入などに対する補助を継続するとともに、優良な乳牛の凍結精液の補助対象を拡大する。また、優良後継牛に対する補助制度の実施により、対象乳牛1頭当たり500元(約7,650円:1元=15.3円)の補助を行うとともに、乳牛種畜生産基地を設置し、優良後継牛資源の増加を図る。

2 飼養の標準化・大規模化に対する支持強化
  飼養場の水路、電気、搾乳施設および飼料基地の建設などに対する補助により乳牛飼養場の集中化を図り、飼養方式・技術の標準化と大規模化を推進するとともに、機械化に対する補助について財政措置する。

3 酪農・乳業特区の建設
  新たな「酪農・乳業特区配置規画」(乳業優勢区域布局規画)を策定し、酪農・乳業特区の配置の最適化と範囲の拡大を進める。

注 「規画」とは、中国語で総合的ガイドラインを示す言葉である。中国政府は、「国民経済・社会発展第10次5カ年計画(2001〜2005年)」など、これまで「計画」という指令的な言葉を用いていたものについて、市場主義経済の導入などとも相まって、計画よりも数量化指標が減らされ、戦略的な方針や任務、対策など、よりマクロ的な政策に重点が置かれた「規画」という語を用いるようになってきている(例:国民経済・社会発展第11次5カ年規画(2006〜2010年))。

4 乳牛の感染防御の強化と保険制度の構築
  乳牛など家畜・家きんの感染症による強制とうたに対する適切な補助を実施するとともに、乳牛の政策的保険制度を構築し、掛け金に対する一定の補助を行う。

5 品質基準体系および表示制度の確立
  還元乳に対する表示を厳格に運用し、還元乳の検査方法・技術、液状乳の加工技術および製品基準を改善し、製品の表示・注記管理の厳格化を図る。

6 酪農・乳業協同組織の発展に対する支援
  酪農・乳業合作社および酪農専業合作社に対する支援を強化する。また、乳業協会に対する支持強化により業界を指導し、市況および各地の生産コストをベースに生乳の買入参考価格を定期的に発表し、合理的な生乳の価格形成システムの構築を模索する。

7 酪農・乳業市場のグローバル化に対する積極的な挑戦
  乳業企業の自主的な研究開発能力を増強し、製品競争力を高め、都市部および農村部住民の消費需要を常に満足させるとともに、牛乳・乳製品の輸出入コントロールを強化・改善し、市場への安定供給の保証と産業としての健全な発展を図る。


酪農・乳業の持続的発展は具体策の内容と運用がカギ

 一般に、中国の政策は、国レベルではスローガン的な大枠が定められ、細かい実行規則の策定は、地方政府に委ねられる場合が多い。このため、今後の中国の酪農・乳業の発展は、中央政府の意図するところがどこまで末端に伝わるかがポイントとなる。酪農・乳業が今なお中国の成長株の産業であることは確かであるが、成功によって裕福な生活を手に入れ、富豪と称されるまでに上り詰める人々がいる一方で、その陰には、酪農・乳業への参入によって逆に生活水準を低下させる人々も数多く、貧富の差が拡大しているといわれる。

 中国では現在、各地域・階層間の格差を是正し、調和のとれた発展を目指す「和諧社会」の実現が国家的スローガンとなっている。今後、中国の酪農・乳業が国内外の激しい競争や食の安全性問題などにさらされつつ、地域・階層の違いを含め、全体として健全な発展を持続することができるか否かについては、今回の乳業発展意見をはじめとする中央政府の方針に基づき、各級地方政府が定める末端に至るまでの具体的政策の内容と運用にかかっていると言える。


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