EUの牛飼養頭数の減少傾向続く


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 2006年は、前年比1.3%減の8,476万頭 ● ● ●

 イギリス食肉家畜委員会(MLC)がこのほど公表した2006年12月時点におけるEU25カ国の牛飼養頭数は、前年比1.3%減の8,476万3千頭とわずかに減少した。牛飼養頭数は、EUでBSEが猛威をふるった96年以降一貫して減少を続けている。昨年同期のセンサスでは、減少幅(▲0.7)がいったん小さくなったものの、全体の9割を占めるEU15カ国の上位国のすべてが減少したことにより、減少率は再び増大する兆しを見せている。

 EUは共通農業政策(CAP)により、生産とは切り離した直接支払い(デカップリング)制度を進めていることや、生乳の生産調整を目的としたクオータ制度による乳用牛の減少などにより、中長期的に見ると域内の牛飼養頭数は減少傾向で推移すると見られている。

 

● ● ● EU15カ国はほぼすべての国で減少 ● ● ●

 今回の公表値(17カ国のみデータ公表)を地域別に見ると、EU15カ国は下位の数カ国を除き軒並み減少している。域内で最も牛飼養頭数が大きいフランスは、前年比0.1%減の1,890万頭と前年並みであったものの、それに次ぐドイツおよびイギリスがそれぞれ同2.5%減の1,260万頭、同2.5%減の999万頭と比較的大きく減少し、全体に大きく影響した。

EU25カ国の国別牛飼養頭数

資料:MLC

 一方、2004年5月以降にEUに加盟した国々(12カ国)については、今回は上位3カ国の公表にとどまっており、チェコおよびルーマニアがすべての国の中で最も大きい2%台の増加率を見せたものの、12カ国の中では飼養頭数が最も大きいとされるポーランドが同1.9%減の528万頭となり、15カ国の主要国と同様に全体を引き下げる要因となった。


● ● ● 乳用経産牛は前年比2.7%の減少 ● ● ●

 飼養形態別では、すべてのカテゴリーで減少しており、中でも、乳用経産牛の減少幅が最も大きくなっている。2006年の乳用経産牛頭数は、前年比2.7%減の2,236万頭となり、国別で見てもルーマニアが同0.9%増の162万頭と増加したのを除くすべての国で減少している。

 近年、国際的な乳製品需要の増大により、EU産乳製品の引き合いが高まり国際価格が急騰しているが、今回のセンサスで乳用経産牛が減少していることから、EUの乳製品需給は今後、ますますひっ迫感が強まるものと思われる。


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